NO.2 坤(こん="Field"):従順さ、母なる大地の原理、臣下の道

坤(こん="Field")sb











坤(こん="Field")



⚋ 6th:上6(Upper6)
⚋ 5th:65
⚋ 4th:64
⚋ 3rd:63
⚋ 2nd:62
⚋ 1st:初6(First6)

※上6(Upper6)、65、64、63、62、初6(First6)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。
坤(こん)は、地の道。母なる大地の原理。臣下の道の究極。
坤(こん="Field"):従順さ、母なる大地の原理、臣下の道。象徴は大地。

構成の解説

上卦(Upper trigram)・下卦(Lower trigram)両方とも
「☷ 坤(こん:Kun)」="Field":大地・従順さ・女性原理・消極・受動的

世界を構成する陽と陰の二つは、それぞれ<䷀ 乾(けん="Force")>と<䷁ 坤(こん="Field")>に象徴される。
<䷁ 坤(こん="Field")>とは大地意味する。もっとも従順なもの。
<䷀ 乾(けん="Force")>のエナジーを「受けて」、動き出す受動的なエナジーが<䷁ 坤(こん="Field")>。
世界をはぐくむ偉大なる母性の象徴。究極の女性原理。
易経では、すべての「始まり」として<䷀ 乾(けん="Force")>と<䷁ 坤(こん="Field")>を置く。
あらゆるものは、この二つから始まり、この二つによって構成される。
絶対的な二元論が易経に流れる一貫したメカニズムである。
二進法としては、0と1の一方である0を意味するのが<䷁ 坤(こん="Field")>。
それは大地の原理でもあり、臣下の道の究極の在り方。物事が主役だけでは成立しない、脇役がいてこそ世界が回っていくことを意味する。
易経では万物の始まりとして、<䷀ 乾(けん="Force")>の次に<䷁ 坤(こん="Field")>が置かれ、特に多くの説明が加えられている。

用6(Use6)
× 6th:老陰:変爻(Change)
× 5th:老陰:変爻(Change)
× 4th:老陰:変爻(Change)
× 3rd:老陰:変爻(Change)
× 2nd:老陰:変爻(Change)
× 1st:老陰:変爻(Change)

用6(Use6)というのは、<䷁ 坤(こん="Field")>のすべての爻(こう=Line)が老陰(Old Yin)の特殊ケース。<䷁ 坤(こん="Field")>だけに見られる状況で、尊重されている。

卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)

「あなたの願うことは実現する。牝馬のように従順な正しさを維持することでその恩恵を受けることができる。あなたがなにかを実行する場合、人々の先に立ってやろうとすると道に迷う。賢者は人々の後に従い、指導者を得て恩恵を受けるべきである。あなたは南西の方角に行けば友を得る。東北の方角に行けば友を失う。正しさを維持すれば吉。」

卦辞 坤は、元いに亨る。牝馬之貞(ひんばのてい)に利あり。君子は往くところあり、先ずれば迷い、後れれば主を得て利あり。西南に朋(とも)を得て、東北に朋をうしなう。貞にやすんずれば吉なり。 (坤、元亨。利牝馬之貞。君子有攸往、先迷、後得主利。西南得朋、東北喪朋。安貞吉。)

<䷁ 坤(こん="Field")>は、たとえるならば、朝日が大地にあたり、大地の水分が温められて水蒸気となって立ち上る、その水蒸気のエネルギーのようなものです。
太陽光線が<䷀ 乾(けん="Force")>だとすると、そのエナジーを受けて動き出す具体的なものの動きを<䷁ 坤(こん="Field")>といいます。
このエナジーはあくまで受け身によって生じるものです。
<䷁ 坤(こん="Field")>の創造力は、すべての動機ではありますが、それを受けて具体化していくものがなければ世界は成立しないのです。
<䷁ 坤(こん="Field")>は始まりのエナジーを受けて出来てくる具体的なあらゆるものの運動です。
受け身で成立するものの象徴ですから、イメージとしては人に良く従う、従順なメスの馬をそのイメージとします。
究極の女性原理を示します。
使われる立場においてそれは真価を発揮しますので、占って<䷁ 坤(こん="Field")>が出た場合は、自分が責任者とかオーナーとか創業者になってはいけません。人から使われる立場で補佐していくほうがあなたの性質には適合します。
組織でも、アイデアや資金だけでは形にはならぬもの。
協力してリーダーの命令を実行していく立場の人たちが必ず必要です。
<䷁ 坤(こん="Field")>はそうした部下の立場という重要な役割を象徴しています。
「南西(southwest)の方角」というのは、易経ではよく出て来ます。向かった方がいい方角の判断であるとともに、「目上から可愛がられるような、親和的な環境や方向性」のことを指します。
東北(northeast)は「孤高で動いていく、困難が予想される場所、あるいは方向性」を意味します。
古代中国の中心部だった洛陽から見たら、東北つまり北方はモンゴル高原で、騎馬民族が住む、寒くて荒涼とした土地でした。
農耕民族だった中華民族からすると、農地を開拓し、フロンティアとしてのチャンスがあったのは、常に南西方面でした。
なので、易経では、南西といえば、チャンスを得られそうで親和的な方向性を意味し、東北はきびしい困難が予想される方向性をさします。
<䷁ 坤(こん="Field")>は従順な生き方が利益をもたらす状況を意味します。ですから、仲間を作りやすく、無理がない方向を選択したほうがうまくいくのです。
これは生きる道に迷うとき坤が出た場合の判断基準でもあります。
いらいらしないで、リラックスしてゆったり構えながら、従属者としての在り方を全うしていくことが、吉、すなわちいい運気の流れを呼び込みます。
限りなく自己主張していくことが価値となりつつある現代ですが、<䷁ 坤(こん="Field")>はそうした自己主張を消して、他者を受け入れることの重要性を語っています。
いい人生というのも必ずしも自己主張することで得られるものではないのです。

◇ひと言アドバイス(象)

どんな意見でも聴き入れよう

<䷁ 坤(こん="Field")>は大地の象徴ですから、いろいろなものがその上に許されて存在します。
<䷁ 坤(こん="Field")>の卦(か=Hexagram)を得たならば、いろんな人のどんな意見でも聴き入れる、受け入れることでその本分が発揮されますよ、ということです。
文句を言わず、受け入れる腹の大きさが<䷁ 坤(こん="Field")>の性質なのですから、あなたもそうあるべきではないでしょうか。
自分と異なる価値観の人間でも、広く受け入れてやってごらんなさい、というのが<䷁ 坤(こん="Field")>のアドバイスです。

爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)

坤(こん="Field")
⚋ 6th:上6(Upper6)
⚋ 5th:65
⚋ 4th:64
⚋ 3rd:63
⚋ 2nd:62
⚋ 1st:初6(First6)

※上6(Upper6)、65、64、63、62、初6(First6)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

◇1st 陰 初6=First6(初爻:陽位)

「あなたが足で霜を踏んだと思っていると、やがてあたり一面が冷え込み凍り付く。」

初爻 初六、霜を履(ふ)んで堅冰(けんぴょう)至(いた)る。 (初六、履霜堅冰至。)

(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)

「陰」は、「陽」と交わることで様々な創造を行うのですが、「陰」だけでは停止し、動きのすべては止まります。
初6(First6)は、霜を踏んだかもしれない、と思っているうちに、すべてが凍り付くという死のイメージです。
「陰」はその負のイメージとしては創造の反対、死に至らしめる悪の道という側面があります。
「陰」だけでは世界は成立しないし、人は生きることができません。
ここでは、霜が降りはじめている、すべてが停止し始めている状態ですが、まだ状況ははじまったばかりです。変えていくこともできるはず。
要注意せよ、との警告の意味が含まれます。

◇2nd 陰 62(二爻:「中」位置:陰位)

「あなたは、大地の美徳を象徴する巨大な正方形である。あえてなにかを習得しなくても、ありのままで真価を発揮することができるだろう。」

二爻 六二、直方(ちょくほう)大なり、習わざれども利あらざるなし。 (六二、直方大、不習无不利。)

(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)

62は、下卦(Lower trigram)の中心で、中庸の徳があります。「陰」があてはまる場所に「陰」として存在しています。
62は従順でこだわりなくあらゆるものを受け入れる「陰」の原理を天性でもっています。
イメージとしては超巨大な正方形(あるいはピラミッド?)です。
生まれながら従順さがある人物は、生き方を新たに習ったりしなくても本来の真価を発揮できます。
あなたは無理に自分の在り方を変えず、ありのままの自分で、従順にやればよい、という易経の判断です。

◇3rd 陰 63(三爻:陽位)

「あなたは才能を人に見せびらかそうとするが、今は他の人に従うべきだ。時には王の事業に従事することになるが、自己主張をしなければいい結果となる。」

三爻 六三、章を含む、貞にすべし。或いは王事に従う、成すことなくして終(おわ)ることあり。 (六三、含章可貞。或従王事、无成有終。)

(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)

63は、本来、誰かに従属して命令に従う性質のものですが、彼が今いる立場は三番目の位置、つまり積極的な自己主張が求められる立場で、本来の性質とのミスマッチがあります。
63は持っている能力も高いので、重大なプロジェクトに参加させられたりもするでしょう。
でも自分の本来の性質を忘れず、あくまで部下であることを忘れず、タイミングを見て物事を行うならば、最終的にいい結果を得ることができます。
あなたは自分の本来の力を発揮することなく、今取り組んでいる仕事を終了するかもしれません。
それだと不満も残るかもしれませんが、しかし我を出して失敗するよりはよほどいいのです。
従順さを忘れないことです。

◇4th 陰 64(三爻:陽位)

「袋の口をくくるように、余計なことを言うな。災いもないが名誉もない。」

四爻 六四、嚢(ふくろ)を括(くく)る、咎(とが)もなく誉(ほま)れもなし。 (六四、括嚢、无咎无誉。)

(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)

四番目の位置は「陰位」で、64は陰です。64は立場としては正しいのです。
しかしこの位置は「中」ではない、つまり中庸ではありません。64には公平で客観的な判断ができません。
一つ上には上司である65がいて、64は65に従属する下っ端の立場。また64には63のような才能もありません。
64は微妙で危険な立場にいます。
そこで、易経は袋の口をしばってしまいなさい、と助言します。
下手な自己主張をしないようにしなさい、と易経はあなたに警告します。
そのようにすれば名誉もないかもしれませんが、問題に巻き込まれたりも避けることができます。
こういう状況はよくあります。
おとなしく黙って余計なことを言わず、時機を待ちましょう。

◇5th 陰 65(五爻:「中」位置:陽位で君位)

「王だけがまとう黄色い衣装。大いに吉。」

五爻 六五、黄裳(こうしょう)、元(おお)いに吉。 (六五、黄裳、元吉。)

(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)

65は、上卦(Upper trigram)の中心、ニュートラルな「中」の立場にいます。が、ここは本来は「陽」がはいるべき場所に、「陰」である65がいます。
65と対応関係にあるのは62です。しかし両方とも「陰」なのでこれらは対応しません。本来ならばこの状況はミスマッチが重なり、トラブルが多い状況です。
しかし<䷁ 坤(こん="Field")>は、特殊な状況なのでそういう一般的な「ミスマッチ」は問題にされていません。
ここでは従順に人の意見に耳を傾ける名君のイメージを黄色い王者の衣装としてあらわします。
黄色は大地の色、従順で柔和で知恵にあふれた控えめな叡智をあらわします。
なので65を得た場合、非常に吉です。
大いによろしい状態です。
占ってこの結果を得たら、従順に人の話がよく聞けています。
その調子で、調整型のリーダーを目指していけばいいでしょう。

◇6th 陰 上6=Upper6(上爻:陰位で無位)

「二匹の龍が荒野で戦って血を流している。その血の色は玄黄色である。(不吉である)」

上爻 上六は、龍、野に戦う。其の血は玄黄(げんおう)。 (上六、龍戦于野。其血玄黄。)

(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)

上6(Upper6)は、<䷁ 坤(こん="Field")>の世界の終極点に達しています。
「陰」が本来陰が入る六番目の陰位にいるわけですが、すべてが「陰」、つまりはまったく消極的でなにもせず、「陽」からのエナジーすら受け入れない極端な状態です。
マイナスのエナジーの極みと言ってもいいでしょう。
この状況では、マイナスのエナジーは強大となり、本来は受け入れて和合するはずの「陽」を突っぱねて血みどろの争いを展開することにもなります。
不吉です。
二頭の龍が荒野で戦い、へんな黄色い血を流し合います。
無駄に生命力を消耗していきます。
このイメージは、重大な警告と言えます。
男をまったく受け入れることのない女性のようなもの。
世界は「陽」と「陰」、男と女が混ざり合うことで成り立っていますから、「陰」だけ、「女性」だけでは成立しません。
自我をすべて放棄して、人に従ってばかりいればいつかは破滅します。
自分の生き方を反省するべきでしょう。

◇用6(Use6)(すべてが老陰の場合の特殊ケース)

「あなたは、正しさを永く続けていく方法を考えることで、その恩恵をうけることができる。陰だけだったものが、最後すべてが陽に変化するということの神妙さをよくよく考えるがよい。」

用六 用六は、永貞に利あり。 (用六、利永貞。)

用6(Use6)と用9(Use9)はともに特殊ケースです。
ここでは、すべてが変爻(へんこう=Change)です。
易経の世界は二進法で「陰」と「陽」しかありません。
「陰」が変化すれば「陽」になります。
「陰」と「陽」はつねに変化していきます。
世界は、絶えず変化していきます。
「陽」であるものが時間とともに「陰」に変化し、「陰」のものが「陽」に変化することは、当たり前の現象です。
人間は自己主張するだけでは生きれませんが、また従順な状態だけでも生きれません。
人間が生きる道の正しさとはなんでしょうか?それは絶え間ない変化を受け入れることだ、と易経は語ってます。
用6(Use6)は最後、すべての「陰」が「陽」に変化し、<䷀ 乾(けん="Force")>に変わります。
永遠に変わらないものはこの世には存在しません。
無限に変化し続ける世界の秘密を知り、あなたも自在なものになっていきなさい、と易経は言うのです。

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