NO.5 需(じゅ="Attending"):待つべくして待つ、躊躇

 需(じゅ="Attending")シンボル

需(じゅ="Attending")



⚋ 6th:陰:上6(Upper6)
⚊ 5th:陽:95
 4th:陽:64
 3rd:陰:93
⚊ 2nd:陽:92
⚊ 1st:陽:初9(First9)

※上6(Upper6)、95、64、93、92、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

需(じゅ="Attending"):待つべくして待つ、躊躇
需(じゅ="Attending"):待つべくして待つ、躊躇


構成の解説

上卦(Upper trigram)
「☵ 坎(かん:Kan)」="Gorge":水・雨・雲・泉・危険・落とし穴

下卦(Lower trigram)
「☰ 乾(けん:Qian)」="Force":天・始まりのエネルギー・男性原理・積極・能動的


下にある「☰ 乾(けん:Qian)」="Force"のエナジーが上へ進もうとしているが、上には「☵ 坎(かん:Kan)」="Gorge"、危険な落とし穴。

あなたは進めないので立ち止まり、待つ。

待つということは、一休みして補給し、体を休めて時期を待つこと。

飲食するという意味や、需要の意味も出てくる。

<䷄ 需(じゅ="Attending")>は、待つべくして待つこと。

状況的には、物事が前に進まないもどかしい状況がいろいろな形で示される。

待つということを易経や道教では前向きに機会をうかがう行為と捉えていることは面白い。


卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)

「誠意と大義をもって待つならば、あなたの願いは大いにかなう。正しく待つことを実行できれば吉である。あなたは大きな川を渉るような冒険を試みてもいい。」

卦辞 需、孚(まこと)有り。光(おおい)に亨る。貞なれば吉。大川を渉るに利あり。 (需、有孚。光亨。貞吉。利渉大川。)

<䷄ 需(じゅ="Attending")>とは、基本的に待つことです。

健全な活動エナジーが、前に危険があるのを冷静に判断して止まって待つのですから、理にかなった行動です。

積極的な姿勢で待つということは、停滞とは違います。

あなたはいい時期が来るのを待つ間に、さらにエネルギーを蓄えます。

そして、チャンスが来たらあなたは一気に行動に出るのですから、願いを実現できる可能性は高いのです。

この卦(Hexagram)では、95は「陽」で君主の位置にいます。

彼は物事を正しくとらえ、天の示す時間を適切に見ています。

正しく待ってから行動できれば、いい状況が期待できます。

また大きな川を渉るような冒険をしても大成功に終わる可能性が高いでしょう。

待つということを易経も道教も重視します。

待つことは、何事も目的を決めたら素早く実行するだけ、とする現代の価値観とは対極的な観念です。

速ければすべてうまくいくほど世界は単純にはできていません。

冒険をするにしても、時機を観なければ単なる特攻です。

積極的に待つことは、無駄なエネルギーを使わないだけでなく、さらにエネルギーを蓄えて準備もできるのです。

待つということは重大な内容を含んでいるのです。


◇ひと言アドバイス(象)

待つ際はリラックスして、英気を養おう

下にある「☵ 坎(かん:Kan)」="Gorge"は水です。

水が水蒸気となって天に雲を作っている状況が<䷄ 需(じゅ="Attending")>です。

雲は立ち上っていても、まだ雨は降りません。

あなたは時機を待たねばなりません。

このような時は、宴会でも開いて楽しく飲食し、待つことを易経は推奨します。

時機が至れば、集中して一気に行動を起こさなければなりません。

だから、待つ際はあなたはリラックスして、英気を養うのです。

そうする中で緊張していた時には気づかなかった視点が見えてくることもあります。

臨機応変に、状況にふさわしく柔軟にあることこそ、易経が求めている中庸です。


爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)

需(じゅ="Attending")
⚋ 6th:陰:上6(Upper6)
⚊ 5th:陽:95
 4th:陽:64
 3rd:陰:93
⚊ 2nd:陽:92
⚊ 1st:陽:初9(First9)

※上6(Upper6)、95、64、93、92、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。


◇1st 陽 初9(First9)

「あなたは危険から遠く離れた郊外で待つ。危険から離れているからといって、普段通りの自分を維持することを忘れてはならない。そうであれば問題は起こらない。」

初爻 初九、郊(こう)に需(ま)つ。恒(つね)を用いるに利あり。咎なし。 (初九、需于郊。利用恒。无咎。)

(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


初9(First9)は「陽」で、出発点にいます。

まだ彼はあまり進んでいません。

危険はまだ先にありますが、彼は早い段階で立ち止まっていい時期になるのを待つことにします。

危険からは離れているので、気が緩むかもしれません。

彼は普段通りを心がけて、気のゆるみが生じないようにするのであれば、いざ動き出すとしても問題は起こらないでしょう。


◇2nd 陽 92

「彼は水から少し離れた砂地の湖畔にて待機する。少し小言を言われることがあるが、最終的にはいい結果となる。」

二爻 九二、沙(すな)に需。小(すこ)し言(ものい)うことあり、終(つ)いに吉。 (九二、需于沙。小有言、終吉。)

(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)


92は、危険な水のたまる湖に近い、砂地の湖畔で待機しています。

ここは小石が多くて下がざらざらしているので、いい居心地ではありません。

小言を言われるような居心地の悪さです。

二番目の位置は本来は「陰」が入るべき位置、おとなしい人が入るべき位置です。

ですが92は「陽」で、積極的です。

彼はミスマッチしているので、周りから少し批判されます。

しかし92は中庸なので、小言やクレームがあっても、彼は無難に処理することができるでしょう。

なので、最終的には吉。


◇3rd 陽 93

「彼は足元が泥の水際にて待機している。危険な敵の領域との境界にいる。なので敵に警戒され、襲撃されるような事態を彼自ら招いてしまう。」

三爻 九三、泥(ひじりこ)に需(ま)つ。寇の至るを致す。 (九三、需于泥。致寇至。)

(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


93は、敵の領域との境界まで進んで待機しています。

ここは危険な水のたまる湖の水際、下が泥で彼の足ははまります。

敵はこんな位置で待機している彼をほぼ領域侵犯者と見なし、攻撃してきます。

彼は危険領域に引きずり込まれてしまいます。

しかし、敵との境界で待機している彼に責任があります。


軽率だと、待っているはずが外からの災いを受けることになってしまうので、待つにせよ、慎重にあるべきです。


◇4th 陰 64

「あなたは血を流す事態に陥っても、今は待つべきだ。やがてはこの落とし穴から抜け出すことができるだろう。」

四爻 六四、血に需(ま)つ。穴より出ず。 (六四、需于血。出自穴。)

(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)


64は、上卦(Upper trigram)、「☵ 坎(かん:Kan)」="Gorge"の危険な領域にすでに入ってしまっています。

ここはすでに安全ではないため、彼は血を流すようなダメージを回避できません。

しかし、64は「陰」です。

彼の性格は従順なので、状況に従って立ち止まり、状況が変化するのを待ちます。

これは正しい判断です。

易経では、困難な時期は「状況が好転するのを待つ」のが最善の判断です。

なので、彼はダメージは避けられないものの、そうした正しい態度で待つならば、援軍が来ることも期待できます。

64と対応関係にある初9(First9)が救援に来ます。

彼はやがてはこの落とし穴のような状況を脱出することができるでしょう。


ここまでの「待つ」は、まだ危険の外で待っていたのに対し、ここでは危険領域に入ってしまったので待つ、という状況です。

状況判断を間違えないように。


◇5th 陽 95

「あなたは、宴会しながら堂々とチャンスが来るのを待つ。正しい状況判断ができれば結果は吉。」

五爻 九五、酒食(しゅし)に需(ま)つ。貞なれば吉。 (九五、需于酒食。貞吉。)

(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)


95は「陽」で、君主です。

彼は君主を意味する五番目の位置に「陽」として正しく入っています。聡明で状況判断ができる君主です。

今は危険の真っただ中ですが、彼は待つしかないと判断し、盛大に宴会を催し、英気を養いながら待っています。

彼は正しい判断をしていますが、危険地帯の真っただ中で時局が変わるのを待っているので、チャンスが来たときは確実に動くことが前提です。


あなたはこのようにできれば、吉です。

待つなら、チャンスが来たら逃してはいけません。


◇6th 陰 上6(Upper6)

「あなたは危険な落とし穴に陥ってしまった。こんな時に限って、招かざる三人の客が殴りこんでくる。彼らに丁重に対応していくならば、最後にはめでたい状況がくるだろう。」

上爻 上六、穴に入る。有不速(まね)かざる之客三人ありて来たる。之を敬(つつ)しめば終いには吉。 (上六、入于穴。有不速之客三人来。敬之終吉。)

(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)


上6(Upper6)は、待つ状況の終極点にいます。

もはや危険を回避するために彼が待つ状況ではありません。

彼は危険な落とし穴にまさに落ち込んでいます。

弱り目に祟り目で、こんな時に限って、これまで穴の外に待機していた三つの「陽」が、前進を開始して攻め込んできました。

彼は絶体絶命です。

しかし、上6(Upper6)は「陰」で、攻め込んでくる者たちの代表である93と対応関係にあります。

「陰」と「陽」は和合するので、彼らには話し合いの余地が残されています。

そこで、困難な状況ではありますが、上6(Upper6)は敬意をもって彼のことろに殴りこんできた「陽」交渉します。

彼がそのようにできれば、今は最悪であっても、彼は最後には吉となります。


易経の世界では、すべてのものは移り変わっていきます。

今日の困難がきっかけとなって明日の幸福ともなります。

最悪の状況に対しても、適切に行動しましょう。


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