NO.54 帰妹(きまい="Converting the Maiden"):婚姻論、不相応な結婚

帰妹(きまい="Converting the Maiden")シンボル






帰妹(きまい="Converting the Maiden")



⚋ 6th:陰:上6(Upper6)
⚋ 5th:陰:65
⚊ 4th:陽:94
⚋ 3rd:陰:63
⚊ 2nd:陽:92
⚊ 1st:陽:初9(First9)

※上6(Upper6)、65、94、63、92、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。


構成の解説

上卦(Upper trigram)は、
「☳ 震(しん:Zhen)」="Shake":雷・地震・物事の胎動・妊娠

下卦(Lower trigram)は、
「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange":水が流れ込みたまっている様子、沢・悦び・口

上卦(Upper trigram)が年長の男を意味し、下卦(Lower trigram)が若い女を意味する。

<䷵ 帰妹(きまい="Converting the Maiden")>は「結婚」という意味なのだが、この卦(Hexagram)の判断は良くない。

結婚について、主に女の立場から様々な局面が描かれている。

この卦(Hexagram)の内容は、結婚に限らず、就職や商取引など、協業の関係すべてに当てはまる。

結婚のような事象は、何度もするものではない。

最初に先をよく見通すことが重要である。

帰妹(きまい)は、結婚。婚姻論。
帰妹(きまい="Converting the Maiden"):婚姻論、不相応な結婚

卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)

「あなたはなにか実行しようとすれば凶、いいことはなにもない。」

卦辞 帰妹、征(ゆ)けば凶。利するところなし。 (帰妹、征凶。无攸利。)

<䷵ 帰妹(きまい="Converting the Maiden")>は「結婚」を意味します。

が、卦辞(Explanation of the Hexagram)には、物事を進めようとすれば凶、しかもいいことはなにもない、という最悪の判断があるだけです。

いったい、どういうことなのでしょうか?


上卦(Upper trigram)が年長の男を意味し、下卦(Lower trigram)が若い女を意味します。

まずは、これが結婚に相応しくない、と易経は言います。

年長の男は、年長の女と結婚すべきですし、若い女は、若い男と結婚すべきです。

世代がミスマッチした結婚はよくないと易経は言います。

また、上卦(Upper trigram)である「☳ 震(しん:Zhen)」="Shake"と、下卦(Lower trigram)である「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange"は、どちらも「陽」の上に「陰」が乗っています。

これは、女が男の上にいる形です。

家庭は、男が上でなければうまくいきません。

だから、この卦(Hexagram)が出れば、家庭の不和や、人間関係のトラブルが予想されるので凶なのです。

恋愛関係で見た場合、五十代の男と十代の若い女のカップルです。

若い女がわがままばかり言います。

このカップルはじきに破綻します。

会社同士の業務提携の場合、経験豊富な老舗の会社とベンチャー企業の協業のようなイメージです。

ベンチャー企業のほうが小賢しくいろいろとごちゃごちゃ要求し、仕事がうまくいかず、協業は破綻します。


意外な組み合わせは、ミスマッチであっても面白い関係ではあります。

ミスマッチが幸福につながる場合もありますが、基本的に若い女のほうが生意気だと破綻します。

この卦(Hexagram)が出たら、結婚相手や協業相手を決める際は、よく考えてください。


◇ひと言アドバイス(象)

将来を推測して協業相手を決めよう

沢の上を、雷が動いていくのがこの卦(Hexagram)のイメージです。

まもなく、天候は大荒れになることが予想されますから、あなたは外出を控えます。


このように、私たちは行動する前に未来を推測する必要があります。

人間は、将来の見通しを楽観的に見てしまいがちです。

私たちは時には、客観的な材料から判断せず、自分の願望で判断して物事を実行します。

こうした態度はだいたい失敗につながります。

結婚とか重大な事業提携などにおいては、小さいことも見逃さず客観的に判断すべきです。

未来をよく推測すれば、結婚や協業には失敗しません。

今現在の状況だけで判断せず、未来を予測して結婚や協業は判断しましょう。

実は人間関係や取引関係における将来的な破綻の兆候は、初期の段階で出ているものなのです。

私の経験から見ると、あなたが無理して合わせねばならない相手とは、いずれ破たんするものです。

あるいは相手のほうが無理してあなたに合わせている場合も同様です。


爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)

帰妹(きまい="Converting the Maiden")
⚋ 6th:陰:上6(Upper6)
⚋ 5th:陰:65
⚊ 4th:陽:94
⚋ 3rd:陰:63
⚊ 2nd:陽:92
⚊ 1st:陽:初9(First9)

※上6(Upper6)、65、94、63、92、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

◇1st 陽 初9(First9)

「彼女は、正妻になれないので召し使いとして彼に嫁ぐ。彼女は不自由な足で歩かねばならない。しかし、この役目を続けていけば吉である。」

初爻 初九、帰妹(きまい)娣(てい)を以(も)ってす。跛(あしなえ)にして履む。征(ゆ)くときは吉。 (初九、帰妹以娣。跛能履。征吉。)

(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


初9(First9)はこの卦(Hexagram)の出発点を意味します。

初9(First9)は、芯が強くしっかり者の女性です。

しかし、初9(First9)は最下位の身分です。

また彼女と対応関係にある夫、94は彼女と同じく「陽」です。

彼女たちは、対応関係が発生しませんので、彼女は彼の正式な妻になることはできません。

そこで召し使いとして、いわば妾として彼と結婚することになります。

彼女は正妻ではありませんから、いろいろと不自由です。

彼女が各種の制限を受けつつ彼に仕えている様子は、不自由な足で歩くようなもの。

しかし、彼女は若い女性なので、正妻として年長の男に嫁ぐのは問題がありますが、こうした低い立場で嫁ぐのは、むしろ相応しいのです。

長い目で見た場合、この立場を彼女が継続すれば、吉の状況にいたるでしょう。


あなたは正式な協業の対象ではありません。

あるいはあなたは正社員にはなれず、非正規雇用の社員にしかなれません。

しかしあなたの今の立場を考えたら、それでいいのです。

あなたは不自由かもしれませんが、継続してあなたの立場を受け入れていけば、信頼関係もできてきて最終的にはいい結果となるでしょう。


◇2nd 陽 92

「斜視(Strabismus)の目で遠くを見ようとしても見えない。孤高の世捨て人のように自分を貫き通したほうがよい。」

二爻 九二、眇(すがめ)にして視る。幽人(ゆうじん)之貞に利あり。 (九二、眇能視。利幽人之貞。)

(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)


92の夫は65です。

92は「陽」で、聡明な女性を意味します。

65は「陰」で、無能な男性です。

92と65は縁があるのですが、こんな男と結婚しても、彼女に未来はありません。

斜視(Strabismus)の目で遠くを見ようとするようなものです。

無理がありすぎます。

彼女が先の見通しを客観的に考えるならば、こんな男と結婚するくらいならば、独身のままの方がいいでしょう。

すぐれた女の独り身は、まるで孤高の世捨て人のようなものです。

が、彼女は優れた女性なのですから、ダメな男と結婚するより孤高でいたほうがいいのです。

結婚でも、就職でも、取り引きでも、この判断は当てはまります。

あなたは愚かな相手に自分を安売りするよりは、孤高でいたほうがいいでしょう。


◇3rd 陰 63

「彼女は、結婚したくても受け入れてくれる相手がいない。いったん実家に戻り、妾として嫁ぐ。」

三爻 六三、帰妹(きまい)以(も)って嬬(ま)つ。反(かえ)り帰(かえ)りて娣(てい)をもってす。 (六三、帰妹以嬬。反帰以娣。)

(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


63は「陰」であるにもかかわらず、「陽」が入るべき三番目の位置にいます。

また、63は下卦(Lower trigram)である「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange"の主体ですから、男を悦ばし、そしてかどわかす淫乱な女性を意味します。

彼女は結婚しようとしても、彼女に対応するはずの夫である上6(Upper6)は、彼女と同じく「陰」なので、彼女は受け入れてもらえません。

つまり、彼女は結婚したくても受け入れる男がいなくて結婚できない、ということになります。

やむを得ないので彼女は実家に戻り、すでに妻がいる男の元に召し使いとして嫁ぎます。


あなたは、正式な妻、正式な社員、あるいは正式な協業関係を目指しても、相手から受け入れてもらえません。

あなたは今は、妾、パート労働者、臨時の代行として出発するしかありません。

しかし、あなたが今できることをしていけば、未来はまた変わっていきます。

あなたは今はできることをしながら、待ちましょう。


◇4th 陽 94

「彼女は婚期を逃した。しかし遅く嫁ぐチャンスはある。」

四爻 九四、帰妹(きまい)期を愆(すご)す。遅く帰(とつ)ぐに時あらん。 (九四、帰妹愆期。遅帰有時。)

(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)


94は「陽」ですが、「陰」が入るべき四番目の位置にいます。

これは、94は素晴らしい女性なのですが、立場上、結婚の機会に恵まれないことを意味します。

彼女とこれまで縁があった男は初9(First9)です。

しかし彼らは両方が「陽」なので結婚できません。

結果的に彼女は婚期を逃し、独身のままです。

しかし、彼女は、自分が本当に尽くすことができる男でなければ結婚したくありません。

相応しい相手が現れるならば嫁ぐつもりです。

彼女は素晴らしい女性なので、遅く嫁ぐにしても、そのチャンスはあります。


この卦(Hexagram)では、あなたが未来を推測して、いい結婚にならないと思われるならば結婚しない方がいいのです。

そういう意味で、この女性のような考え方は正しいのです。


◇ 5th 陰 65

「帝乙(Dì yǐ)が彼の末娘を、有力な臣下に嫁がせた。その姫君の着る服の袖は、夫の妾達の着る服の袖に見劣りする。だがもうじき満月。彼女は幸福になる。」

五爻 六五、帝乙(ていいつ)妹(いもと)を帰(とつ)がしむ。其の君之袂(そで)は、其の娣(てい)之袂(そで)の良きに如かず。月(つき)望(もち)に幾(ちか)し。吉。 (六五、帝乙帰妹。其君之袂、不如其娣之袂良。月幾望。吉。)

(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)


「帝乙(Dì yǐ)が彼の末娘を、有力な臣下に嫁がせた。」は、<䷊ 泰(たい= "Pervading")>でも出てくるフレーズです。

帝乙(Dì yǐ)とは、古代の殷王朝の優れた王です。

でもこの名前は、一般名詞として、優れたバランス感覚の王、あるいは柔軟な最高責任者という意味で使われます。

帝乙(Dì yǐ)は、日本語では「Tei-yitu」と発音されます。

王が末娘である65を、下卦(Lower trigram)の中心である92に嫁がせた、という意味です。

(<䷊ 泰(たい= "Pervading")では、65は王を意味した。この卦(Hexagram)では、65は王の末娘を意味し、92に嫁ぐ本人である。)

65は従順で控えめな女性です。

彼女は気高く、中庸です。

92の妾達は、美しい服で着飾っていますが、65は控えめなので派手な衣装は着ません。

にもかかわらず、彼女は素のままにして魅力を放ち、満月が近づいた月のように光輝いています。

当然、彼女は幸せな結婚生活を送ることができますから、吉となるでしょう。

賢く控えめさがある女性は、身なり貧しくても光り輝きます。


結婚以外の、就職や取り引きにおいても、体裁ではなく相応しい中身が一番重要です。

あなたは運気が絶頂期にあります。

徳があれば、結婚でも仕事でもうまくいきます。


◇6th 陰 上6(Upper6)

「花嫁が持参品を捧げるが、中にはなにもはいっていない。新郎の男が婚礼の生贄に捧げる羊を刀で割くと、血が一滴も出ない。この婚姻は誠意に欠けている。利点はない。」

上爻 上六、女(じょ)筐(かたみ)を承(ささ)ぐるに実(み)なし、士(し)羊(ひつじ)を刲(さ)くに血なし。利するところなし。 (上六、女承筐无実、士刲羊无血。无攸利。)

(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)


上6(Upper6)は「陰(Yin)」で、女性としての賢さや徳を欠いています。

彼女に縁談が出ていますが、彼女の結婚相手、63も「陰(Yin)」で、ダメな男です。

しかも彼らは両方が「陰」ですので、この婚姻は長続きしません。


この爻(Line)のイメージは強烈です。

花嫁が、舅に差し出した婚礼の持参品を開けると、中身が入っていません。

これは、花嫁に女性の徳がないことを意味します。

新郎が、婚礼の宴席に出す生贄の羊を刀で割くと、血が出ません。

これは、新郎もたくましさを欠いていて、誠実さがないことを意味します。

この結婚は不吉です。


結婚は、結婚する自覚がない者同士を見合い結婚させても、不幸になるだけです。

むろん、見合い結婚であっても、幸せな結婚になる場合もありますが、それは妻と夫に結婚に対する誠意がある場合だけです。

結婚に対する誠実さがないならば、結婚しない方がいいのです。



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