NO.52 艮(ごん="Bound"):山、行き止まり、障壁

艮(ごん="Bound")シンボル






艮(ごん="Bound")



⚊ 6th:陽:上9(Upper9)
⚋ 5th:陰:65
⚋ 4th:陰:64
⚊ 3rd:陽:93
⚋ 2nd:陰:62
⚋ 1st:陰:初6(First6)

※上9(Upper9)、65、64、93、62、初6(First6)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

艮(ごん="Bound"):山、行き止まり、障壁
艮(ごん="Bound"):山、行き止まり、障壁

構成の解説

上卦(Upper trigram)・下卦(Lower trigram)両方とも

「☶ 艮(ごん:Gen)」="Bound":山・障壁・行き止まり

上下が同じ小成卦(Trigram)の組み合わせで出来ている卦(か=Hexagram)のことを、「重複卦(Duplicate Trigram)」という。

<䷳ 艮(ごん="Bound")>もそうした「重複卦(Duplicate Trigram)」の一つ。

<䷳ 艮(ごん="Bound")>が意味するところは、大きな困難に邪魔されて動きが停止してしまった状況。

太陽が上昇していき、究極点に達していて、動きが止まった。

あなたはもうこれ以上は昇れない。

下は崖である。

上下の卦(Trigram)ともに、一番上に「陽」が一つある。

<䷳ 艮(ごん="Bound")>の象徴は山である。

山の頂上にいて孤立するイメージ。

高い能力がありながら一人だけ孤立した状況を意味する。

<䷜ 坎(かん="Gorge")>も困難を意味したが、人間関係のなかでの困難を意味していた。

<䷳ 艮(ごん="Bound")>の場合は、世捨て人的な孤高の状況を意味する。

爻辞(Explanation of the Lines)もそのほとんどがいい要素はでてこない。

易経は、楽観的なことばかり述べて他人を安心させるものではなく、人間に生じうるあらゆる状況を示し、その中でいかに生きるかを示すものである。

だから<䷳ 艮(ごん="Bound")>が示す状況もまた表象として当然含まれる。

<䷳ 艮(ごん="Bound")>は完全な行き止まりを意味し、我々の存在の意味や在り方を考えさせる。


卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)

「その心を背中にとどめて、身体を動かさない。その庭に入っていってもそこにいる人とは会わない、話をしない。そのようであれば問題は生じない」

卦辞 其の背に艮まりて其の身を獲ず。其の庭に行きて其の人を見ず。咎なし。 (艮其背不獲其身。行其庭不見其人。无咎。)

<䷳ 艮(ごん="Bound")>が示す状況は、意欲や創造性をもった「陽」が上昇していった結果、「陽」はだれもついていけない異次元の境涯にいたり、それゆえに孤立しています。「完全停止」を意味します。

凡人たちは、彼があまりの高みにいるため、彼を理解しません。聖書の「ヨハネによる福音書」で、「光は闇の中で輝いている。闇は光を理解しようとしなかった」とありますが、<䷳ 艮(ごん="Bound")>が示す状況は、まさにそのような状況です。


完全停止の時期ですが、そういうときもあるということ、あなたは止まらざるを得ないときは、とどまるべきで、時機が変わればまた進めばいいのです。

これが世界の真理です。

今のあなたは、誰とも意見は合いません。

この卦(Hexagram)は「対立」も意味しています。

この卦(Hexagram)では、それぞれの対応する爻(Lines)が、すべて「陰」と「陰」、「陽」と「陽」なので和合しません。

こういう時期もあることを認識して、状況に従いなさい、と易経は述べます。

心は、心がとどまるとされる背中にとどめ、行動してはいけません。

「その庭に入る」とは、人と出会う場所に行くこと。

会議やパーティーに参加しても、あなたはしゃべらず、いるかいないかわからぬようにするべきです。

あなたが隠者のようにふるまえば、なにも問題は起こりません。


儒学者たちは、この卦(Hexagram)が老荘思想を反映していると言いますが、あなたは見識が高すぎて今は誰にも理解されず孤立します。

沈黙して時機がくるのを待ちましょう。

そういうときもある、と割り切っていくしかないのですよね。


◇ひと言アドバイス(象)

どっしりと座って動かず、自分の立場を越えることには口出ししない

山が二つかさなったのが<䷳ 艮(ごん="Bound")>です。

山はどっしり座って動きません。

そこで易経は、この状況では、どっしりと座って動かず、あなたの立場を越えることには口出ししないように、と忠告します。

あなたは孤立していて孤高、今は理解者がいない時期ですから、余計なことに口を出せば誤解され、さらに孤立するばかり。

人間界はいいことばかりではありません。

運が悪い時こそ、自分を反省して成長しましょう。


爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)

艮(ごん="Bound")
⚊ 6th::上9(Upper9)
⚋ 5th:陰:65
⚋ 4th:陰:64
⚊ 3rd:陽:93
⚋ 2nd:陰:62
⚋ 1st:陰:初6(First6)

※上9(Upper9)、65、64、93、62、初6(First6)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

1st 陰 初6=First6(初爻:陽位)

「あなたは足首にとどまる。問題はないだろう。冷静な態度で正しい身の処し方をすればいい方向に行くだろう。」

初爻 初六は、其の趾(あし)に艮まる。咎なし。永貞に利あり。 (初六、艮其趾。无咎。利永貞。)

(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


この卦(Hexagram)は、身体の部処のイメージで各爻(Line)の説明が書かれます。

初6(First6)は、一番下にあるので、足首のイメージです。

一番目の位置は、「陽」が入るべき場所です。

初6(First6)は、本来は動いて上昇を始める立場にあります。

が、初6(First6)は「陰」です。

彼は消極的なので動き出さず止まります。

あなたは孤立していて完全停止した状況にいますから、あなたが止まるのは正しい態度です。

問題の発生を未然に防ぐことができます。

しかし完全停止の状況はまだ始まったばかり。

あなたはこうした態度を続けていけるなら、問題は回避できるのですが、続けられますか?と、易経は警告します。

注意して孤立状況を乗り切りましょう。


2nd 陰 62(二爻:「中」位置:陰位)

「彼はそのふくらはぎにとどまる。彼は友が不正であることを諫めて救いたい。だが、そうできずに友に随っている。彼が気持ちがいいわけはない。」

二爻 六二、其の腓(こむら)に艮まる。拯(すく)わずして其れ随う。其の心快ならず。 (六二、艮其腓。不拯其随。其心不快。)

(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)


二番目の位置は「陰」がはいるべき場所。

62は「陰」で、正しい臣下を意味し、二番目の位置は中庸であることも意味します。

しかしこの場所の象徴はふくらはぎ。

動きが激しい部位のため、周りの動きにほんろうされます。

上に上司にあたる93がいますが、彼は「陽」、彼がいる三番目の位置も「陽」が入るべき場所です。

93はなんでも積極的にやりすぎ、無謀なことでも実行します。

62は93の無謀を忠告してやめさせたいのですが、彼には忠告する力がなく、不本意ながら93に流されて従ってしまいます。

62は正しいことを言えないので、いい気持にはなれません。

しかし、今は完全停止している時期なので、62は黙って93に従うしかありません。

これは人間界ではよくある状況です。

しかし、止むを得ません。

気分は悪くても余計なことを言わないことが、今は大事です。


3rd 陽 93(三爻:陽位)

「彼はその腰にとどまる。彼は背筋を引き裂かれる。彼の危うい状況は、まるで心臓を煙でいぶされるようである。」

三爻 九三、其の限(こし)に艮(とど)まる。其の夤(せじし)を列(さ)く。厲(あやう)きこと心を薫(ふす)ぶ。 (九三、艮其限。列其夤。厲薫心。)

(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


93は「陽」、「陽」が入るべき三番目の位置にいます。

彼はなんでも積極的にやりすぎます。

無謀な行動をやめません。

彼は周りをすべて「陰」に囲まれていますが、「陰」は無能な人たちを意味します。

93がなにかをやろうとしても、上司からも部下からも穏便に拒否されます。

彼の様子は、腰の背筋を引き裂かれるようなもの。

非常に危険な状況です。

彼は居場所がなく、まるで心臓を煙でいぶされるような状況です。


改めて、「ひと言アドバイス(象)」を見直してください。

今は、あなたは周りから理解されていません。

なにかを積極的に行おうとすれば、この爻(Line)のようになりますから、行動を控えてください。


4th 陰 64(四爻:陰位)

「彼はその胴にとどまる。問題ない。」

四爻 六四、其の身に艮まる。咎なし。 (六四、艮其身。无咎。)

(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)


64が象徴する体の部位は胴、いわば腹です。

胴は心がとどまるべきところです。

64は「陰」、いる場所は四番目、「陰」が入るべきところ。

この状況は、おとなしい人が、おとなしくすべき場所にいますから、正しい状況です。

この爻(Line)は出れば、完全停止している<䷳ 艮(ごん="Bound")>の状況において、あなたはうまく存在感を消しています。

そのようであるならば、何も問題は起こらないのです。


5th 陰 65(五爻:「中」位置:陽位で君位)

「あなたはあごの関節にとどまる。発言に気を付けて余計なことをいわなければ、後悔しない。」

五爻 六五、其の輔(つら)に艮まる。言序(ことついで)あり。悔い亡ぶ。 (六五、艮其輔。言有序。悔亡。)

(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)

65は「陰」、彼がいる場所は五番目、君主の座です。

65は、立場と性質はミスマッチしていますが、中庸です。

これがここではいい方向で作用します。

65が象徴する身体の部位はあごの関節、話す場所です。

65は君主なので、発言しなければなりません。

彼は冷静でニュートラルですから、余計なことは言いません。

なので孤立をさらに深めることはありません。

<䷳ 艮(ごん="Bound")>に象徴される状況では、余計なことを言わないのが重要です。


6th 陽 上9=Upper9(上爻:陰位で無位)

「あなたは最後までよくとどまり続けた。良い結果となるだろう。」

上爻 上九、艮(とどまる)るに敦(あつ)し。吉。 (上九、敦艮。吉。)

(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)

上6(Upper9)は、<䷳ 艮(ごん="Bound")>の終極点です。

一番上の位置は、「陰」が入るべき場所。

上6(Upper9)は「陽」、積極的な人間を意味します。

状況はミスマッチに見えますが、彼はおとなしくとどまることに「積極的」なのです。

なので彼はこの卦(Hexagram)の要求に忠実に従っています。

当然、いい結末になるでしょう。

孤立した完全停止の状況もすでに終わりが近づいています。

停止を抜けた先には、いい状況が続いていくと暗示して、<䷳ 艮(ごん="Bound")>は終わります。


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