NO.10 履(り="Treading"):履行、事後対処

履(り="Treading")シンボル

 





履(り="Treading")


 6th:陽:上9(Upper9)
⚊ 5th:陽:95
⚊ 4th:陽:94
⚋ 3rd:陰:63
⚊ 2nd:陽:92
⚊ 1st:陽:初9(First9)

※上9(Upper9)、95、94、63、92、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

履(り="Treading"):履行、事後対処
履(り="Treading"):履行、事後対処。象徴は虎。


構成の解説

上卦(Upper trigram)
「☰ 乾(けん:Qian)」="Force":天・始まりのエネルギー・男性原理・積極・能動的

下卦(Lower trigram)
「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange":水が流れ込みたまっている様子、沢・悦び・口

上にある「☰ 乾(けん:Qian)」="Force"は、剛毅で武骨なエナジーの塊。

下にある「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange"が、「☰ 乾(けん:Qian)」="Force"をよろこばせ、なだめる。

<䷉ 履(り="Treading")>は足で履む、という意味。

実行するという意味もある。

この卦(Hexagram)は虎が象徴生物、虎の反応で様々な状況を想定する。

なにかを実行してしまった後での事後対処を考察する卦(Hexagram)である。


卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)

「虎の尻尾を足で履んでしまうが、虎はあなたを食らわない。そうであれば思うことうまくいく。」

卦辞 虎の尾を履むも人を咥(く)らわず。亨る。 (履虎尾不咥人。亨。)

(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


虎は剛毅で巨大な力をもった人物を象徴します。

ここでは権力者とか、大組織のボスとか、その気になるなら相手を一気に食い殺すこともできそうな、暴力的なイメージもある人物を虎が象徴します。

それが上卦(Upper trigram)の「☰ 乾(けん:Qian)」="Force"です。

下卦(Lower trigram)の「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange"は、虎のしっぽを踏んでしまった人物を表します。

あなたが、悪気はなく、力のある人物を怒らせてしまった、という状況をこの卦(Hexagram)は意味します。

虎のしっぽを踏んでしまっても、虎に食い殺されないためにはどうしたらいいのでしょう。


「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange"は、相手をなだめてよろこばせるという意味を持っています。

相手を怒らせたときは、まずは言い訳せずに謝ることが重要です。

虎の本体は五番目にいる95です。

中庸で健全な君主です。

あなたがもし、95を怒らせても、あなたが言い訳せず、礼儀正しく謝罪するならば、95は、あなたの誠意や人間性をしっかりと感じ取り、その後はあなたを強力にサポートしてくれます。

むしろこれをきっかけにあなたと95はいい関係になります。


なにか商売をやっていると、ちょっとしたミスで相手を怒らせてしまうことはよくあります。

またお客様や取引先から苦情を出されることもよくあります。

お客様やお取引先様からクレームを出された時は、あなたはまずは相手に謝罪し、弁解しないで相手の話をよく聞くべきです。

さらに取引以上のサービス品を相手に贈って、相手に気遣いを示します。

さらにあなたはクレームで相手に指摘された問題点を改善していきましょう。

そうするくならば、クレームを出した相手は、あなたの援助者になります。

筆者も長らく接客に従事していましたけれど、お客が怒った場合は絶対に弁解しないことがなによりも大事です。

クレーム対応で弁解を先に出す人は、「虎に食い殺され」ます。


■ひと言アドバイス(象)

自分と相手の立場の違いを理解しよう

上にある「☰ 乾(けん:Qian)」="Force"は、天を意味します。

下にある「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange"は、沢を意味します。

天が上にあり、沢が下にあるのは物理的に当然のことです。

この卦(Hexagram)においては、自分と相手の立場の違いを理解することが重要です。

統治の面では、支配者と臣民それぞれの立場と権限をはっきりさせることで統治のシステムは安定します。

立場の違いがはっきりしているから、それぞれの立場で目的を持ち、人は安定して努力していけます。

ビジネスの世界でも、お客様と販売者の立場の違いをよく理解することです。

お客様は販売者にとっての君主です。

こういう立場の違いはしっかりとわきまえたほうがいいでしょう。


爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)

履(り="Treading")
 6th:陽:上9(Upper9)
⚊ 5th:陽:95
⚊ 4th:陽:94
⚋ 3rd:陰:63
⚊ 2nd:陽:92
⚊ 1st:陽:初9(First9)

※上9(Upper9)、95、94、63、92、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

■1st 陽 初9(First9)

「彼はまだ歩き始めたばかり。先入観なく物事を一歩一歩踏みしめる。行動して問題ない。」

初爻 初九、素(つね)に履む。往きて咎なし。 (初九、素履。往无咎。)

(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)


初9(First9)は仕事を始めたばかり、一人の新人です。

素直に人の言うことを聞き、一歩一歩道を踏みしめながら歩き始めた者です。

彼は「陽」で、「陽」が入るべき一番目の位置にいます。

前向きな人間が歩き始めたイメージです。


こうした謙虚な進み方ならば、願うことはかなうでしょう。


■2nd 陽 92(二爻:「中」位で陰位)

「彼は、道を急ぐこともなく遅れることもないマイペースでたんたんと我が道を履みしめて歩いていく。世を外れた隠者としての生き方に忠実ならば吉となる。」

二爻 九二、道を履むに坦坦なり。幽人なれば貞にして吉。 (九二、履道坦坦。幽人貞吉。)

(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


92は「陽」で、高い能力を持ち、二番目の位置にいるので中庸です。

95が君主として92と対応する位置関係にあります。

この二人は両方が「陽」なので対応関係が発生しません。

つまり、92は君主から認めてもらえません。

ですが、92は腐ることなく、自分の境遇を受け入れて堂々と自分のペースで人生を踏みしめていきます。

彼は世の中を離れた隠者のように生きることも受け入れます。


このように自分の現在の立場を受け入れて、自分に忠実な生き方をしていくのであれば、あなたは出世とは無縁であっても、吉となるでしょう。


■3rd 陰 63

「彼は人を睨むような眼で見て、びっこの足で踏み歩こうとする。彼は虎の尻尾を踏んで、虎にかみつかれる。凶である。彼のような武人が内乱を起こし、王になろうとするようなこともあるかもしれない。」

三爻 六三、眇(すがめ)にして視、跛(あしなえ)にして履む。虎の尾を履み人を咥(くら)う。凶。武人大君となる。 (六三、眇能視、跛能履。履虎尾咥人。凶。武人為于大君。)

(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


63は「陰」で、「陽」が入るべき三番目の位置にいます。

彼の性格は陰険、身の程を知らずに行動を起こします。

彼は率先して行動する立場にありますが、陰険なのでミスマッチです。

彼は不正で立場をわきまえておらず、周りにも悪影響を与えます。

彼の様子は、まるで人を睨むような眼で見て、足が不自由で歩けないのに道を踏みしめて行こうとするようなもの。

彼は接する人に警戒や敵意を抱かせます。

こういう人物が虎の尻尾を踏めば、当然ながら虎も噛みつくので凶です。


あなたが、もしこのような態度でなにかをやろうとしているならば、考え直してください。

あなたが、もしこういうタイプの人と仕事をしたり、こういう人の配属先を考える立場であるならば、こういうタイプの人は、性格は陰険で恨みを根に持ちます。

こういう人物はやがて武力で内乱を起こし、自分が組織を乗っ取ろうとするようなことがあるかもしれません。あなたは十分に警戒したほうがいいでしょう。


■4th 陽 94

「彼はうっかり虎の尾を踏んでしまう。しかし彼は従順な姿勢で、手際よく相手をなだめて適切に行動するので、最終的に状況は吉となる。」

四爻 九四、虎の尾を履む。愬愬(さくさく)たれば終に吉。 (九四、履虎尾。愬愬終吉。)

(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)


94は「陽」で、活発です。

彼は「陰」が入るべき四番目の位置にいるので、活発でありながら従順な行動がとれる人です。

彼はうっかり虎の尻尾を踏んでしまいます。

しかし彼は立場をわきまえつつ、快活に謝りながら、どうしたらいいかをあれこれ考えます。

立場をわきまえて快活に謝罪して、対応策を考えるのは、クレーム処理の原則をすべて備えています。

なので、彼はたとえ相手を怒らせることになったとしても、最終的には相手に彼の誠意は伝わり、いい関係ができて吉となるのです。


■5th 陽 95

「彼は思いつめて決断を下す。真面目ではあるが融通が利かぬので危うい。」

五爻 九五、夬(さだ)めて履む。貞なれど厲(あや)うし。 (九五、夬履。貞厲。)

(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)


95は「陽」で、五番目の君主の位置にいます。名実ともに君主です。

彼は正しい判断力と権力を行使して、物事を決着させるための決断を下します。

しかし物事というのは、すべて白黒の決着をつけれるものでもありません。

あいまいにしておくことが、時には最善である場合もあります。

すべてを決着させてしまったとすれば、理屈では正しいとしても、現実の状況からすれば不都合が生じることは多いのです。


あなたは権限を持ってなにか決断を下す立場にいます。

しかし決断しないことも一つの選択肢であることを忘れないでください。

この機微をわからずなにもかも決着させるようですと、それが正しくても危険な状況を招きます。


■6th 陽 上9(Upper9)

「神はあなたが踏んだ道の結果を見て、吉凶禍福の判断を下すだろう。発生した状況の中で、あなたがうまく行動できるならば、大いに吉ともなるだろう。」

上爻 上九、履むを視て祥を考(な)す。其れ旋(めぐ)るときは元吉。 (上九、視履考祥。其旋元吉。)

(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)


上9(Upper9)は、この卦(Hexagram)の終極点を意味します。

この状況は、あなたがすでに虎の尻尾を踏んでしまった後です。

あなたは、自分がしてしまったことが吉か凶かを知りたいと思っています。


しかし易経は次のように言います。

神はあなたが起こした状況が、どういう経過をたどるかを観察したうえで吉凶や禍福の判断を下す。

あなたはすでに虎の尻尾を踏んでしまった。

それに対してどのように今後行動するのかで結果は決まる。

あなたが起こした状況を後悔するのではなく、どう対処するかを考えなさい。


あなたは、すでに起こった状況を後悔しても手遅れです。

起こってしまった状況は変わりません。

起こってしまった状況にあなたがどう対処するかが今は重要です。

考え方を切り替えて、未来は自分で作っていきましょう。



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