NO.51 震(しん="Shake"):地震、雷、不測の事態

震(しん="Shake")シンボル




震(しん="Shake")




⚋ 6th:陰:上6(Upper6)
 5th:陰:65
⚊ 4th:陽:94
⚋ 3rd:陰:63
 2nd:陰:62
⚊ 1st:陽:初9(First9)

※上6(Upper6)、65、94、63、62、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

構成の解説

上卦(Upper trigram)・下卦(Lower trigram)両方とも

「☳ 震(しん:Zhen)」="Shake":雷・地震・物事の胎動・妊娠

上下が同じ小成卦(Trigram)の組み合わせで出来ている卦(か=Hexagram)のことを、「重複卦(Duplicate Trigram)」という。

<䷲ 震(しん="Shake")>もそうした「重複卦(Duplicate Trigram)」の一つ。

<䷲ 震(しん="Shake")>が意味するところは、陰と陽が混ざり合って、なにか創造的な動きが発生するとき、不測の事態が発生する。

その象徴が地震であり、大地が新しいものを宿して震える振動。

そこから、妊娠の意味も発生する。

この生み出された気が天に昇るとき雷となり、やがて嵐となって大地すべてにいきわたり、潤す。

全般的に新しくなにか物事が発生する不測の状況を暗示する。

震(しん="Shake"):地震、雷、不測の事態
震(しん="Shake"):地震、雷、不測の事態。象徴は雷。

卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)

「あなたは願いがかなう。地震が来た時、人々は驚いてあたりを見回しておどおどするが、事態が落ち着けば笑う。地震は遠くまでおびやかす。地震が起こってもあなたは慌てず神を祀りなさい。」

卦辞 震は、亨る。震来たるとき虩虩(げきげき)たり。笑言(しょうげん)唖唖(あくあく)たり。震は百里を驚かす、匕鬯(ひちょう)を喪(うしな)わず。 (震、亨。震来虩虩。笑言唖唖。震驚百里、不喪匕鬯。)

<䷲ 震(しん="Shake")>は上卦(Upper trigram)も下卦(Lower trigram)も、下に発生した「陽」がこれから立ち上っていく形をあらわしています。


「陰」と「陽」が混ざり合って、なにかが生まれる、発生するときの衝撃を<䷲ 震(しん="Shake")>はあらわしています。

人間に例えたら、男女が混ざり合って妊娠するというイメージです。

これまで経験しなかったことが、ポジティブな意味で起こってくることを示していますが、こういうことは発生した当初は驚天動地、びっくりして慌てるのが当然。

私たちはびっくりして驚いて恐れるのですが、そうやって恐れるからこそ、これまでの状況は整理されます。そしていい状況が新しく生成されていくのです。だから易経の判断は「物事がうまくいく」となります。

例えとして、あなたは地震がきても、祭りで使う祭器に入ったお酒をこぼさぬくらい冷静になりなさい、と易経は書きます。

地震はパニックを引き起こしますが、災い転じて福となるもの。不測の事態で起こってくることに対処していく中で、あなたは物事を今まで以上に良くしていけるのです。

また、地震のような不測事態でも冷静な対応ができるならば、あなたはリーダーとして組織を率いていくこともできます。

祭りを主催するとはそういう意味を持っています。

この卦(Line)が出たら、なにか予想もつかぬ出来事が起こり、混乱が発生するかもしれませんが、これをきっかけとして新しいなにかが生まれる暗示でもあります。

なにが起こってもうろたえず、冷静に対処するならば、やがては災害も笑い話になるでしょう。

◇ひと言アドバイス(象)

不測事態をきっかけとして、自分の至らぬところを反省しなさい

雷が立て続けに落ちて鳴り響くのが、震のイメージです。

雷は、世界共通して神の怒りというイメージでとらえられてきました。

易経は<䷲ 震(しん="Shake")>について、不測の事態をきっかけとして、自分に至らぬところや間違ったところがないだろうか、と反省しなさい、とアドバイスします。

不測の事態が起こるときは、これまでの常識やなれあいが通じなくなるので、これまでの古い在り方を見直すにはまさに最適の機会なのです。

新しいものが生まれる、古いものが更新されるというのは、いい意味でとらえたらたいへん創造的でめでたいのです。


爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)


⚋ 6th:陰:上6(Upper6)
 5th:陰:65
⚊ 4th:陽:94
⚋ 3rd:陰:63
 2nd:陰:62
⚊ 1st:陽:初9(First9)

※上6(Upper6)、65、94、63、62、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

◇1st 陽 初9(First9)

「地震が来た時、人々は驚いてあたりを見回しておどおどするが、事態が落ち着けば、ああよかったね、と笑いをこぼす。吉である。」

初爻 初九、震来たるとき虩虩(げきげき)たり。後には笑うこと唖唖(あくあく)たり。吉。 (初九、震来虩虩。後笑言唖唖。吉。)

(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


初9は<䷲ 震(しん="Shake")>の最初、まさに「陰」と「陽」が混ざり合い、新しいなにかが生まれたその瞬間。

新しいことは、たいていは最初は不測の事態から始まるものです。

ここでは卦辞(Explanation of the Hexagram)とほぼ同じことが書かれています。新しい状況というのは非常事態でもあって、大慌てして当然ですが、事態が落ち着けばやがては、あの時は怖かったよねー、大変だったよねーと笑い話になります。

不測の事態が発生するから、恐れていろいろと新しい対処が必要になります。

それが結果的には、いままでよりより良いシステム、方式、枠組みとなって物事を発展させるのだよ、と易経は伝えます。

だからこそ、吉となるのだよ、と。

既存のままでは、物事は発展していきません。

不測の事態は、状況を更新するためのまたとない機会です。


◇2nd 陰 62

「あなたは、震源の真上にいて、地震のとき危うい。あなたは多くの財産を失い、高いところへと避難しなくてはならない。喪ったものは探さなくても七日もすれば取り戻せる。」

二爻 六二、震来たる厲うし。億(おお)いに貝(たから)を喪(うしな)い、九陵(きゅうりょう)に躋(のぼ)る。逐うなかれ。七日にして得ん。 (六二、震来厲。億喪貝、躋于九陵。勿逐。七日得。)

(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)


62は、震源である初9(First9)の真上にいるので、あなたは直下型地震を経験します。

激しい揺れで家屋は壊れ、財産を多く失います。

洪水も発生するので高いところに登って避難生活もしなければなりません。

しかし、62は「陰」で、しかも「陰」が入るべき二番目の位置にいますから、あなたは冷静で中庸です。

性質と位置がマッチしています。

なので不測の事態で多く資産を失ったとしても、新しいシステムや新しい財産として生まれ変わることで、しばらくすればすぐ取り戻すことができます。

むしろこれまでよりも新しくいいものが手に入るでしょう。

易経では吉との判断は出ていませんが、あなたが不測事態に従順に対応するならば、いい方向に事が進むのは疑う余地はありません。


◇3rd 陰 63

「彼は、正しい立場におらぬので、天罰を受けて地震に遭い、呆然自失となる。しかし、恐れて反省するなら災いはないだろう。」

三爻 六三は、震(ふる)いて蘇蘇(そそ)たり。震いていくときは眚(わざ)わいなし。 (六三、震蘇蘇。震行无眚。)

(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


63は「陰」。63がいる三番目の位置は、「陽」が入るべき場所。ミスマッチしています。

63はリーダーシップがとれないリーダーなので天の怒りを受け、地震がきて、63は呆然自失となります。

ですが、63は「陰」なので従順です。彼は地震が来たことで、わが身を振り返って反省することができます。

あなたが反省することができるならば、不測の災害にあっても、新しいシステムの構築へとつながりますから、恐れなくてもいいのです。

易経では、反省するということを重視します。

反省するから、改善がおこり、それがあなた自身にも周りにも新しいいい状況をもたらすのです。


◇4th 陽 94

「地震が来るが、揺れは地面にこもって液状化現象を起こす。」

四爻 九四は、震いて遂(つい)に泥(なず)む。 (九四、震遂泥。)

(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)


<䷲ 震(しん="Shake")>は上卦(Upper trigram)も「☳ 震(しん:Zhen)」="Shake"で、94は震源です。

初9(First9)も震源でしたが、大きな状況の刷新につながりました。

94は革新につながりません。

四番目の位置は、本来は「陰」がくるはずの位置。

94は「陽」ですのでミスマッチしています。

そのため震源のエナジーは十分に発揮されず、地震はくるけれどエナジーは天まで昇っていきません。

この地震は雷を起こさず、雨となって世界に及びません。

結局、液状化現象が起こり、すべてが泥の中に埋もれてしまうだけとなります。

あなたは、なにか不測の事態にあいますが、状況は変わりません。

こういう状況であなたはどうしたらいいでしょう?

「ひと言アドバイス」を参照してください。

第四番目の場所は「陰」が入る場所、おとなしくして反省するのが正しい在り方です。

今回のアクシデントでは状況は変わらないかもしれませんが、あなたが反省すれば将来の状況は変わっていくものです。


◇5th 陰 65

「地震が発生、あなたは逃げても、とどまっても危うい。しかし致命的になにかを失うということはなさそうである。」

五爻 六五、震(ふる)いて往くも来たるも厲うし。億(おお)いに有事を喪(うしな)うことなし。 (六五、震往来厲。億无喪有事。)

(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)


65は、震源(64)の真上にいるので、大きな直下型地震にあいます。

五番目の位置は、本来は「陽」がはいるべき位置。65は「陰」です。65は力が弱いのです。

あなたは、直下型地震の揺れで非常に危険な状況に陥ります。

しかし、この五番目の位置は、中庸でこだわりなく対応ができる立場を意味します。

そして65は弱いが従順です。

臨機応変の柔軟な対応ができることを暗示させます。

あなたが柔軟に対応するならば、被害は出るでしょうが、致命的な損失は回避できる、と易経は判断します。

柔軟に対応してください。


◇6th 陰 上6(Upper6)

「あなたは、地震が来ておどおどし、あたりをきょろきょろ見回している。ここで行動しようとすれば凶である。あなたは他の土地で発生した地震の教訓を生かして、普段から恐れるべきだ。そうすれば、地震にあっても、慌てて行動はしないし、問題はない。婚姻については、相手が文句を言ってきて、縁談がこじれる。」

上爻 上六、震(ふる)いて索索(さくさく)たり。視ること矍矍(かくかく)たり。征けば凶。震(ふる)うことその躬(み)においてせず、その隣においてするときは、咎(とが)なし。婚媾(こんこう)ものいうことあり。 (上六、震索索。視矍矍。征凶。震不于其躬、于其隣、无咎。婚媾有言。)

(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)


上6(Upper6)は、<䷲ 震(しん="Shake")>の最上位の位置にいます。

<䷲ 震(しん="Shake")>の終極点ですので、揺れが一番激しくなります。

上6(Upper6)は五番目の「中」の位置を超えているので、彼は客観的で冷静な判断ができません。

なので地震が来ると、上6(Upper6)おどおどと慌てふためき、きょろきょろあたりを見回しては、そのつど状況に流されてしまうでしょう。

ここで、あなたは慌てふためいて何か行動に出ると、凶となります。

しかし、別な地域で地震があったときに、あなたが地震の恐ろしさを教訓として、わが身を顧みてシュミレーションをしているのであれば、大きな問題は起こりません。

不測の事態は、いつでもどこでも、誰にでも起こってくるものです。

普段から地震の想定をしているならば、トラブルは起きない、と易経は忠告します。


最後、なぜか結婚のイメージが出てきます。

あなたが結婚の相談を進めている場合は、相手が文句を言ってきて話はこじれるであろう、と。

この爻(Line)は地震の影響を最もひどく受けますから、不測の事態で結婚も前提条件が大きく変わってしまうのです。

なので、結婚は最初の話のようには進まなくなります。

これは結婚の場合だけでなく、契約交渉でも当てはまります。交渉事は不測の事態発生で前提が変わり、話がこじれるでしょう。

普段からいろんな不測の事態を想定する癖をつけておきなさいよ、という戒めです。


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