NO.32 恒(こう="Persevering"):一貫性、信念

恒(こう="Persevering")シンボル






恒(こう="Persevering")


⚋ 6th:陰:上6(Upper6)
⚋ 5th:陰:65
⚊ 4th:陽:94
⚊ 3rd:陽:93
⚊ 2nd:陽:92
⚋ 1st:陰:初6(First6)

※上6(Upper6)、65、94、93、92、初6(First6)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。


構成の解説

上卦(Upper trigram)は、
「☳ 震(しん:Zhen)」="Shake":雷・地震・物事の胎動・妊娠

下卦(Lower trigram)は、
「☴ 巽(そん:Xun)」="Ground":風・木・中に入り込む動き


上にある「☳ 震(しん:Zhen)」="Shake"には、長男の意味があり、下にある「☴ 巽(そん:Xun)」="Ground"には、長女(の意味がある。

女が男にへりくだる形になるので、家庭が長続きしていく意味となる。

この夫婦には、永続する一貫性、恒久性がある。

一貫性は信念とも関係する。

社会性を持った生物である人間にとっては、一貫性は信用に関わる重大なテーマである。


卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)

「あなたの願いはかなう。正しく信念を貫き通すならば、いい状況となる。あなたが考えていることを実行に移して構わない。」

卦辞 恒、亨る。咎(とが)なし。貞(ただ)しきに利あり。往くところあるに利あり。 (恒、亨。无咎。利貞。利有攸往。)

この卦(Hexagram)は、恒久性、一貫性を意味します。

それはずっと変わらないで永続するもの、という意味ですが、変化する状況の中で一貫した信念を維持することでもあります。

年長の女子が、年長の男子の下にへりくだる形です。

女性が男性にへりくだることは、家庭が円満に継続するための本質です。

易経では、卦(Hexagram)の中に対応し合う位置関係があります。

一番目の位置と四番目の位置、二番目の位置と五番目の位置、三番目の位置と上の六番目の位置がそれぞれ対応します。

対応する爻(Line)が、「陰」と「陽」で調和するならば、彼らはめでたい関係にあると易経では考えます。

この卦(Hexagram)では、すべての対応関係が「陰」と「陽」で調和していますので、願うことがかなう状況が示されています。

筆者の経験から見ると、<䷟ 恒(こう="Persevering")>が出る場合は、占う者は、「信念の一貫性」を問われています。

ここでの正しさは、一貫して貫くことができる信念を持っていることです。

易経では、次のように言います。

天地の道、すなわち天体の運行や、太陽と月の運動、季節の移り変わりは、すべて変わらない一貫した永続性をもっており、そうした一貫性がここで求められている正しさの意味である。

聖人は、変わることのない一貫した正しさを貫くことで、天下を教え、秩序と安定を実現する。

あなたは、世界のいたるところにある一貫した本質をよく観察して、世界の秘密を知りなさい、と。


筆者の知り合いの例を挙げましょう。

「和食の手作り家庭料理」の店を出した人がいました。

彼は手作りした家庭料理を販売していましたが、売り上げが上がりません。

そこで彼は売れるものを出せばいい、と考え、冷凍で仕入れたラーメンも店に出し始めました。

また冷凍ピザを仕入れてオーブンで炙って出し始めました。

彼は、鳥の唐揚げが売れる、と聞けば冷凍品の鳥唐揚げを仕入れて出し、かき氷が売れると聞けばかき氷を出し、ドライフルーツが売れるといえば店内に並べました。

彼の店は、次第に何を売る店かわからなくなり、彼も料理を自分で作らなくなりました。

彼の店は、固定客が行かなくなり、やがて廃業しました。

彼の店は「和食の手作り家庭料理」というコンセプトだったはずです。

が、彼は「手作り」のポリシーも、「和食」のテーマも、「家庭料理」のコンセプトも、目先の売り上げを求めて自分で捨ててしまったのです。

<䷟ 恒(こう="Persevering")>が意味する一貫性にも続くならば、彼は「和食の手作り家庭料理」を一貫して続けるべきでした。

彼は店のテーマの一貫性の中で、新メニューを出すこともできたはずです。


<䷟ 恒(こう="Persevering")>が出た場合、あなたがやろうとしていることは、うまくいく見通しが高いです。

が、あなたが最後まで一貫性を維持できる信念があることが条件です。

あなた自身の信念がなんであるのかを、改めて考えることが先決です。


◇ひと言アドバイス(象)

スタイルを変えても、信念には一貫性を持とう

この卦(Hexagram)は、上が雷、下は風です。

雷と風はどちらも動いて止まらないものですが、相互に関係しあって助け合っています。

この点で雷と風には恒久性があります。

賢者を志すのであれば、あなたは状況に応じてスタイルを変えたとしても、信念には一貫性がなければなりません。

人間は、目先の利益に流されやすいものです。

しかし、一貫性とは、あなたの大義であり、そして信用です。

あなたが、昨日までと言っていたことを簡単に変えるならば、なにをもってあなたを信用するか、周りの人は分からなくなってしまいます。

一貫性を失った人は、友人もいなくなるでしょうし、家族でさえ離れていくでしょう。

自分らしさという点でも、一貫性をもった生き方は大事にしてください。


爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)

恒(こう="Persevering")
⚋ 6th:陰:上6(Upper6)
⚋ 5th:陰:65
⚊ 4th:陽:94
⚊ 3rd:陽:93
⚊ 2nd:陽:92
⚋ 1st:陰:初6(First6)

※上6(Upper6)、65、94、93、92、初6(First6)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

◇1st 陰 初6(First6)

「あなたは、未熟者のくせに、相手に一貫性を要求する。正しそうに見えるけれど凶である。いいことはない。」

初爻 初六、浚(ふか)く恒(つね)にす。貞(ただ)しけれども凶。利するところなし。 (初六、浚恒。貞凶。无攸利。)

(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


初6(First6)は「陰」ですが、彼は「陽」が入るべき最初の位置にいます。

これは、能力のない人間が偉そうなことを言うイメージです。

彼はまだ若く未熟です。

彼には94が対応する位置にいて、彼らは「陰」と「陽」で調和しますが、彼らの間にはほかに92、93もいます。

92,93も「陽」で彼と調和するので、彼は誰と一緒になるか迷います。

初6(First6)は、いい気になって、94に言います。

「92、93も私のことを愛している。

私と交際したければ、94は一貫性をもって私を愛するべきである」と。

彼自身が、94に対して一貫した愛を持っていないのに、彼は94にそれを要求しています。

彼は災いを受けるでしょう。


あなたは、自分には一貫性がないのに、他人に一貫性を要求しています。

まずは自分を反省してください。

さもないと災いが起こります。


◇2nd 陽 92

「彼は、不正のように見えるが、不正の中でバランスを維持できるから、後悔はしない。」

二爻 九二、悔い亡(ほろ)ぶ。 (九二、悔亡。)

(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)


92は「陽」ですが、彼は本来は従順で控えめな「陰」が入るべき二番目の位置にいます。

彼はミスマッチで正しくありません。

彼と対応する位置に65がいますが、65は「陰」で、「陽」が入るべき五番目の位置にいます。

92も65も不正ですが、彼らは「陰」と「陽」で調和します。

つまり、92は不正ですが、彼は一貫して長く付き合える仲間に恵まれます。

また92は、二番目の位置にいるので、中庸でバランス感覚だけはちゃんと持ち合わせています。

なので、彼は一見ミスマッチだらけに見えるにもかかわらず、一貫性を持続できるので後悔することはありません。


あなたにはミスマッチや不正があっても、バランスがとれているので不思議と後悔しなくて済むでしょう。


◇3rd 陽 93

「彼は、気分次第で行動し、一貫性を欠いているので、相手から受け入れられず恥をかく。彼の性格や立場からすれば、彼は正しいが、みっともない。」

三爻 九三、其の徳を恒(つね)にせざれば、或いは之が羞(はじ)を承(う)く。貞(ただ)しけれども吝。 (九三、不恒其徳。或承之羞。貞吝。)

(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


93は、積極的な「陽」です。

彼は、「陽」が入るべき三番目の位置にいます。

彼は正しい立場にいます。

しかし、彼には中庸ではなく、気分で行動します。

彼と対応関係にあるのは上6(Upper6)です。

彼と上6(Upper6)は、「陰」と「陽」で調和し、彼らは相思相愛です。

なので93は上6(Upper6)のところへ行きたくて落ち着きません。

上6(Upper6)の気を引こうとして、彼は一貫性なく彼女にアプローチを掛けます。

彼がいつも違ったことを彼女に言います。

彼女は彼が何者なのかよくわからなくなります。

彼らが相思相愛であっても、これでは彼は上6(Upper6)から受け入れられません。

彼の性格や立場からすれば、間違ってはいません。

でも結果的に、彼は恥をかくことになります。


あなたには、運命的な相手がいるのですが、あなたはその相手に対して一貫性がある態度を示しているでしょうか。

あなたは一貫性を持たないと、相手の人から見捨てられます。

反省してください。


◇4th 陽 94

「ここで狩りをしてもあなたは獲物を得られない。」

四爻 九四、田(かり)して禽(えもの)なし。 (九四、田无禽。)

(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)


94は「陽」で、積極的な性質です。

しかし彼が今いる四番目の位置は、動かず従順にしているべき立場を意味します。

94は「陽」なので、彼は一貫性をもって積極的にやろうとします。

しかし、彼は従順でなければならない立場にいるので、成果は全く上がりません。

彼は、獲物がいない所で一生懸命に狩りをしているようなもの。

当然、彼は獲物を得られません。


この爻(Line)が出たら、あなたは一貫性や信念をもっているのですが、今の状況ではなにも成果は得られません。

あなたの立場が変わるか、状況が変わるのを待ちましょう。

獲物がいない場所で狩りをしても、獲物は得られません。


◇5th 陰 65

「あなたは、一貫した従順さを持っている。あなたのこうした態度は、妻には吉だが、夫には凶である。」

五爻 六五、其の徳を恒(つね)に貞(ただ)しくす。婦人は吉、夫子は凶。 (六五、恒其徳貞。婦人吉、夫子凶。)

(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)


65は「陰」ですが、「陽」が入るべき五番目の位置にいます。

65は従順な人物で、中庸です。

しかし、65がいる位置は、本来は「陽」が入る場所なので、65はミスマッチしています。

65は、本来は強く、積極的であるべきなのです。


さて、あなたは、一貫した従順さを持っています。

あなたが、女性で妻であれば、一貫性した従順さは美徳です。

あなたは幸せな家庭を築くことができます。

しかし、あなたが男性で夫であれば、積極的でいろんなことを自分で判断しなければなりません。

もし、あなたが夫としていつも人に従うばかりでは、家庭は崩壊します。

従順さは、性別と立場によって吉凶が異なります。

この爻(Line)が出たら、あなたの性別や立場から判断してください。

特にあなたがもし男性で夫ならば、生き方を見直すべきです。


◇6th 陰 上6(Upper6)

「あなたは、能力もないのに高い地位にあり、一貫して怯え、震えている。凶。」

上爻 上六、振(うご)くこと恒たり。凶。 (上六、振恒。凶。)

(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)


上6(Upper6)は、<䷟ 恒(こう="Persevering")>の終極点を意味します。

上6(Upper6)は、一貫性をすでに持てなくなっています。

彼は「陰(Yin)」で主体性がありません。

彼がいる一番上の位置は、上卦(Upper trigram)である「☳ 震(しん:Zhen)」="Shake"の終極点で、地震の振動が最も強い場所です。

彼は実力もなく、信念もないのに、一番上の高い地位にいます。

彼は、無方針で、落ち着きがありません。

彼にある唯一の一貫性は、いつ今いる地位から転落するか不安で怖れることだけです。


あなたは、根本的に自分の生き方を考え直すべきです。

相応しくない地位を降りる必要もあります。

あなたは時期を待っても無意味です。

あなた自身を変えてください。

自分の信念がなんであるかを考えてください。

卦辞
恒、亨る。咎(とが)なし。貞(ただ)しきに利あり。往くところあるに利あり。
(恒、亨。无咎。利貞。利有攸往。)
初爻
初六、浚(ふか)く恒(つね)にす。貞(ただ)しけれども凶。利するところなし。
(初六、浚恒。貞凶。无攸利。)
二爻
九二、悔い亡(ほろ)ぶ。
(九二、悔亡。)
三爻
九三、其の徳を恒(つね)にせざれば、或いは之が羞(はじ)を承(う)く。貞(ただ)しけれども吝。
(九三、不恒其徳。或承之羞。貞吝。)
四爻
九四、田(かり)して禽(えもの)なし。
(九四、田无禽。)
五爻
六五、其の徳を恒(つね)に貞(ただ)しくす。婦人は吉、夫子は凶。
(六五、恒其徳貞。婦人吉、夫子凶。)
上爻
上六、振(うご)くこと恒たり。凶。
(上六、振恒。凶。)

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