NO.38 睽(けい="Polarising"):反目、対立

睽(けい="Polarising")シンボル






睽(けい="Polarising")



⚊ 6th:陽:上9(Upper9)
⚋ 5th:陰:65
⚊ 4th:陽:94
⚋ 3rd:陰:63
⚊ 2nd:陽:92
⚊ 1st:陽:初9(First9)

※上9(Upper9)、65、94、63、92、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

睽(けい="Polarising"):反目、対立
睽(けい="Polarising"):反目、対立


構成の解説

上卦(Upper trigram)は、
「☲ 離(り:Li)」="Radiance":太陽・火・文明・付着する

下卦(Lower trigram)は、
「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange":水が流れ込みたまっている様子、沢・悦び・口

上が火、下が沢。

火と水は、性質が真逆で対立する。

この卦(Hexagram)は、二人の女が目を背け合い、互いに反発するイメージ。

「☲ 離(り:Li)」="Radiance"は中年の女を意味する。

「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange"は若い女を意味する。

同じ家に女が二人いるので、喧嘩が起こる。

反目や対立を表象する。

反目や対立というと良くないことのように思えるが、易経の作者は、反目を通じてこそ、世界は相互理解にいたると考える。

反目や対立は大きな調和にいたる重要なきっかけである。

また、対立や反目の時期においては、敵の敵は味方というような、奇妙なパラドックスも発生する。


卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)

「今は互いの個性が対立し背き合う時だから、あなたは大きなことはできない。小さいことなら進めて吉となるだろう。」

卦辞 睽、小事には吉なり。 (睽、小事吉。)

<䷥ 睽(けい="Polarising")>とは、目を背け合うこと、反目や対立を意味します。

上卦(Upper trigram)は火を象徴し、下卦(Lower trigram)は沢を象徴します。

火と水は、互いの性質が合いませんので対立します。

また上卦(Upper trigram)は中年の女を象徴し、下卦(Lower trigram)は若い女を象徴します。

同じ家に女が二人いると、互いに思うことも違えば行動原則も違いますから、対立します。

しかし上卦(Upper trigram)は智慧を象徴し、下卦(Lower trigram)は悦びを象徴します。

また、上卦(Upper trigram)の主体は65、下卦(Lower trigram)の主体は63で、この二つは「陰」なので従順です。

背きあう二人の女は、二人とも従順なので心が通じる部分もあります。

中年の女の知恵を、若い女が喜んで受け入れれば、少しだけ調和が生まれます。

なので、この卦(Hexagram)がでれば、小さいことならば吉となります。


反目や対立は、人間がそれぞれに個性や特性が異なっているから発生する現象です。

人間はそれぞれが違う個性を持っているので対立もしますが、よく観察してみると互いに人間で、同じ本質を持っています。

天と地は対立しているようで、それぞれが役目をはたして世界を構成しています。

男と女は性質は全く異なったとしても、互いを求めて子つくる気持ちは同じだから、家庭が成り立ちます。

対立や反目があるから、世界には発展の可能性が残されているのです。

対立があるから、対立する二人は互いをより深く理解し合う可能性があります。

対立がある時は、大きな調和の可能性が実現していくチャンスでもあるのです。


この卦(Hexagram)が出たら、あなたは誰かと対立し、大きなことは実行できません。

しかし、この対立を通じ、あなたは相手をより深く理解できるかもしれません。

対立の中で、互いの理解を深めることができれば、あなたは大きな世界の調和を実現できます。

修行の時期ではありますが、この困難な時期をチャンスに変えていくべきです。


※筆者注

この卦(Hexagram)に示される時期は、奇妙なことが起こる時期でもあります。

全ての人において、これまで進んでいた方向性が逆転します。

敵対していた人とあなたは親しくなるかもしれません。

だから、あなたは偏見を持たずに、嫌いな人とも交流してみるといい時期です。


◇ひと言アドバイス(象)

仲良くしても、同化はしない

この卦(Hexagram)は、上卦(Upper trigram)と下卦(Lower trigram)が対立しつつも結合し、それぞれの中心である65と92は「陰」と「陽」で調和します。


ここで易経は、対立する二人が最終的に和解することは重要だが、相手に合わせて自分の本質を捨ててはいけない、と忠告します。

対立している二人には、その背後にそれぞれの個性、それぞれの良さがあります。

個性を殺して相手に合わせても、二人の和解は長続きしません。

「仲良くしても、同化はしない」という格言があります。

自分の個性や立場は貫くべきで、その上で互いが妥協できる道こそ、大きな発展につながる道です。

対立という困難な状況が、大きな相互理解、大きな発展には必要不可欠であるというパラドックス、世界の大きな秘密の一つです。


爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)

睽(けい="Polarising")
⚊ 6th:陽:上9(Upper9)
⚋ 5th:陰:65
⚊ 4th:陽:94
⚋ 3rd:陰:63
⚊ 2nd:陽:92
⚊ 1st:陽:初9(First9)

※上9(Upper9)、65、94、63、92、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

◇1st 陽 初9(First9)

「あなたは後悔しない。馬を見失ってしまうが、探さなくても馬は自分で戻ってくる。あなたは疎遠だった人と親しくなり、味方だった人が敵になるという奇妙な状況にいる。なので通常はあなたと対立している悪人にも会って、話を聞きなさい。そうすれば問題ない。」

初爻 初九、悔い亡(ほろ)ぶ。馬を喪(うしな)うも逐(お)うことなくして、自(おのず)から復(かえ)る。悪人を見れば咎(とが)なし。 (初九、悔亡。喪馬勿逐、自復。見悪人无咎。)

(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


初9(First9)は、<䷥ 睽(けい="Polarising")>の始まりを意味し、いろいろと対立が起こりそうです。

初9(First9)は、積極的な「陽」です。

彼は対応関係にある94に頼みごとをしたいのですが、94は彼と同じ「陽」なので、互いに反発します。

初9(First9)ががっかりしていると、通常は彼と対立している94から、奇妙なことに援助協力の申し出があります。


これは今の状況が、<䷥ 睽(けい="Polarising")>のため、本来は対応しあうはずのものは反目して去りますが、本来反目し合う者同士は逆に対応し合います。

奇妙な時期なのです。

馬(協力者)がいなくて先には行けないな、と思っていたら馬が自分のほうから戻ってくる、というイメージです。

本来は残念な状況になるはずがそうならず、思わぬラッキーな状況が来ます。


こういう時期にあなたはいるので、あなたにとって誰が味方になり、誰が敵になるかは今は分かりません。

そこで、たとえば通常はあなたと対立する悪人の話も聞いてみるような心がけが大事になります。

通常の敵味方の先入観を捨ててみてください。

そのようであれば、思わぬ味方が増えるかもしれません。


◇2nd 陽 92

「彼は、自分が仕える君主を見失い、あちこち探すがなかなか出会えない。ところが、思いもしない街中の路地でばったりと君主に出会う。あちこち探し回るのはみっともないようだが、問題ない。」

二爻 九二、主に巷で遇う。咎なし。 (九二、遇主于巷。无咎。)

(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)


92は「陽」で、「陰」が入るべき二番目の位置にいます。

なので、彼はミスマッチしています。

しかし、彼が二番目の位置にいることは、彼の中庸な性格を意味します。

92は65に仕えています。

彼らは「陰」と「陽」で調和しています。

しかし、今は<䷥ 睽(けい="Polarising")>の状況なので、92が君主に会おうとしてもタイミングが合わず会えません。

92は君主をあちこち探しますが、なかなか君主と出会えません。

92が君主を探すのを諦めかけた時、下町の路地で、不意に君主と遭遇します。

このように彼は君主を探すのに苦労しますが、それは君主に仕える家臣としては当然の行動ですから、問題ありません。


この爻(Line)が出たら、あなたはなかなか意図する相手に会えません。

でも、あきらめずに探していけば、そのうち不意に探す相手と遭遇します。

結果的に問題はありません。


◇3rd 陰 63

「あなたは権力者に会いに行こうするが、敵に車を後ろから引き戻され、さらに牛を制止され、遅刻する。権力者はあなたの頭に入れ墨し、あなたの鼻を削ぎ落す。しかし、最終的にはあなたに対する彼の誤解が解け、いい状況になる。」

三爻 六三、輿(くるま)を曳かる。其の牛掣(とどめ)らる。其の人天(てん)せられ且つ劓(はなき)らる。初めなくして終わりあり。 (六三、見輿曳。其牛掣。其人天且劓。无初有終。)

(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


63は「陰」で、能力がありません。

しかし彼がいる場所は、「陽」が入るべき三番目の位置なので、彼はミスマッチしています。

63は、対応関係にある上9(Upper9)から呼び出されます。

63と上9(Upper9)は、「陰」と「陽」で調和する関係で、上9(Upper9)が63の援助者です。

63が上9(Upper9)に会いに行こうとすると、敵である92と94が邪魔します。

92は63の乗る車を後ろから引き戻そうとします。

94は63の車を引く牛が前に進めないようにします。

63は遅刻して上9(Upper9)のところに到着しますので、上9(Upper9)は激怒します。

彼は63の頭に入れ墨を入れ、さらに63の鼻をそぎ落とします。

しかし最終的に63が故意に遅れたわけでないことを上9(Upper9)は理解するので、いい状況になります。


この爻(Line)が出たら、あなたは敵からは妨害を受けますし、目上の人間からも誤解されて罰せられます。

しかし、最終的にはいい状況になるでしょう。

あなたが災難を受けるのは、あなたの地位があなたにとって不適切なのです

最終的にはめでたい状況にはなりますから、あなたは今は不運に遭遇しても我慢しましょう。


◇4th 陽 94

「彼女は、夫と反目しあって、独りで暮らしている。しかし対立する者同士が親しくなり、親しい者同士が対立する時がくる。彼女は反目していたはずの夫とばったり遭遇する。逆転現象が起こり、今度は固く信じあうようになる。今まで反目していた者同士が一緒になるというのだから、危険ではある。しかし問題はない。」

四爻 九四、睽(そむ)いて孤(ひと)りなり。元夫に遇う、交(こもごも)孚(まこと)あり。厲(あや)うけれども咎(とが)なし。 (九四、睽孤。遇元夫、交孚。厲无咎。)

(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)


<䷥ 睽(けい="Polarising")>の時期は、本来親しくしていた者が反目し合い、逆に反目していた者同士は親しくなる時期で、奇妙な逆転現象が発生します。

それは反目するのも、親しくなるのも、両者に同じ本質が備わっているからです。

さて、94と対応関係にある初9(First9)は夫婦ですが、彼らは両方とも「陽」なので反目しています。

94は夫と別れて独りで暮らしています。

ところが<䷥ 睽(けい="Polarising")>の時期がおとずれ、奇妙な逆転現象が起こります。

94は夫と遭遇しますが、これまで対立していた二人は、今度は固く信じあうようになり、復縁することになりました。

もともと反目し合っていたはずの者同士が一緒になる、というのは危うい関係のようにも思えます。

しかし、問題はありません。

反発しあう者同士は、実は似た性質を互いに持っていて、相手の性質をよく知るがゆえに反発し合うのです。

なので、反目し合う二人は、親友にもなりえます。


この爻(Line)が出たら、あなたは敵と和解し、互いに信頼し合うかもしれません。

敵と話をしてみたらいかがでしょう。


◇5th 陰 65

「彼は、後悔しなくてよくなる。疎遠だった親戚が、簡単に敵を咬み切り、彼のもとへやってくる。彼は問題なく先へ進める。」

五爻 六五、悔い亡(ほろ)ぶ。その宗膚(そうはだえ)を噬(か)む。往くとして何の咎(とが)あらん。 (六五、悔亡。厥宗噬膚。往何咎。)

(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)


65は「陰」です。

彼は君主なのに力がありません。

このままでは彼は、君主であることを後悔しなければならなくなりそうです。

65には、対応関係にある92がいます。

92は65の親戚ですが、92と65の間には、63と94という敵がいたので、彼らは疎遠でした。


しかし<䷥ 睽(けい="Polarising")>の時期が来ます。

逆転現象が起きる時期ですので、これまで疎遠だった92が、突然、65を助けに来ます。

92は、邪魔する63と94を、薄肌をかみ切るように征伐します。

65は、92の援助のもとで、彼の思いのままに政治を行っていけます。


今は、対立関係が逆転する時期なので、あなたは疎遠だった人から強力な援助を得ます。

これまであなたが考えていたことを実行に移していい時期です。


◇6th 陽 上9(Upper9)

「彼は、対立の極限にいる。なにも信じられなくなり、孤独である。女が彼に会いに来るが、彼女は敵に囲まれ困っている。彼は、彼女も敵だと思う。彼女を汚い豚であるかのように見る。彼の猜疑心は高まり、女の乗る車を、幽霊がたくさん載っていると思い、弓を手に取り、彼女を撃とうとする。彼は正気になる。弓の糸を外す。女は、自分にあだを為そうとするのではなく、彼と結婚したがっている。彼と彼女が結ばれれば、陰と陽が調和する。雨が降れば吉。」

上爻 上九、睽(そむ)いて孤(ひと)りなり。豕(いのこ)の塗(ひじりこ)を負えるを見る、鬼を載せること一車。先には之れが弧(ゆみ)を張り、後には之れが弧(ゆみ)を説(はず)す。寇(あだ)をするにあらず婚媾(こんこう)せんとす。往いて雨に遇えば吉なり。 (上九、睽孤。見豕負塗、載鬼一車。先張之弧、後説之弧。匪寇婚媾。往遇雨則吉。)

(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)


この爻(Line)は難解です。

上9(Upper9)は、<䷥ 睽(けい="Polarising")>の終極点にいます。

また彼は同時に、「☲ 離(り:Li)」="Radiance"の終極点にいます。

彼はすべてのものから目を背け、孤独の極限に達し、ついに精神に異常をきたしました。

彼の恋人である63が、彼に会いに来ようとしています。

ところが92と94が、彼女を行かせまいと邪魔します。

頭がおかしくなった上9(Upper9)は、63が彼らと浮気していると思い、63を汚い豚だと罵ります。

63はそれでも彼のもとにやってきますが、さらに頭が狂った彼は、彼女が乗る車に乗っているのが幽霊だと思い、彼の弓を手に取り、撃とうとします。

しかし、ようやく彼は正気を取り戻します。

彼がよく見ると、63は彼を殺しに来たのではなく、彼と結婚しようとしているのです。

彼が63を受け入れて、結婚すれば、二人は「陰」と「陽」なので調和し、恵みの雨が降るでしょう。

そうなれば世界はよくなります。


この爻(Line)が出た場合、あなたは被害妄想に陥り、あなたを慕ってくれる人を敵だと思い込んでいないでしょうか?

今一度冷静になって考えてみてください。

相手はあなたを害そうとしているのではなく、あなたと一緒にやりたいと望んでいます。

このことに気づけば、あなたは力強いパートナーを得て、幸せを実現できます。

反目という状況が起こる原因の一つは、疑心暗鬼です。

猜疑心に侵されていると、あなたに好意を持ってくれている相手も、幽霊のように見えるものなのです。

疑いを解くことで世界は全く別の実相を表します。


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