NO.19 臨(りん="Nearing"):課題に臨む、服従させる

臨(りん="Nearing")シンボル









臨(りん="Nearing")




⚋ 6th:陰:上6(Upper6)
⚋ 5th:陰:65
⚋ 4th:陰:64
⚋ 3rd:陰:63
⚊ 2nd:陽:92
⚊ 1st:陽:初9(First9)

※上6(Upper6)、65、64、63、92、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

臨(りん="Nearing"):課題に臨む、服従させる
臨(りん="Nearing"):課題に臨む、服従させる。


構成の解説

上卦(Upper trigram)は、
「☷ 坤(こん:Kun)」="Field":大地・従順さ・女性原理・消極・受動的

下卦(Lower trigram)は、
「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange":水が流れ込みたまっている様子、沢・悦び・口


下から「陽」が、上に向かって成長していく「消息卦(Transition Hexagram)」の一種。

「陽」が勢いをもって、「陰」が意味する邪悪たちに強引に迫り臨む。

下卦(Lower trigram)が「悦ぶ」、上卦(Upper trigram)が「順う」ので、邪悪たちも「悦んで順う」。

あなたが邪悪たちになにかを強制しても、結果的に彼らは従う。

なのでめでたい前途をこの卦(Hexagram)は示す。

他者になにかをやらせる際の洞察を書いた卦(Hexagram)。



卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)

「正義がどんどん伸びていく時期なので、あなたの願いは大いにかなうだろう。バランス感覚をもって冷静に正しく物事を進めるがよい。八月に入ると災いが起こる。(だから、あなたは運がいいときに前進すべきである)」

卦辞 臨、元いに亨(とお)る。貞しきに利あり。八月に至りて凶あり。 (臨、元亨。利貞。至于八月有凶。)

下のほうから「陰」がどんどん伸びていく形、あるいは下のほうから「陽」がどんどん伸びていく形をもった卦(Hexagram)のことを、「消息卦(Transition Hexagram)」といいます。

「陽」は正義、道理、善人のイメージ。

「陰」は不義、不正、悪人のイメージ。


この卦(Hexagram)の場合、下卦(Lower trigram)が「悦ぶ」、上卦(Upper trigram)が「順う」なので、邪悪たちも「悦んで順う」結果となります。

この卦(Hexagram)の主体は92です。

彼は邪悪たちを制圧する司令官、「陽」で積極果敢、しかも中庸でバランス感覚や冷静な判断力を備えています。

彼を65が将軍に任命します。

二番目の位置は本来は「陰」が入る位置なので、ここに「陽」として入る92はミスマッチです。

彼は行き過ぎる可能性があります。

しかし、92と対応関係にある65は、君主として己を虚しくし、能力あるものに権限を委任し、92とは「陰」と「陽」で調和します。

92は強引に仕事を進めても、正しい地位にいるので、邪悪たちを制圧する仕事を成功させるでしょう。


しかし、「八月に入ると災いがある」と易経は最後に付け加えます。

今は「陽」が下から増えていきますが、すべてが「陽」になると、今度は下から「陰」が発生して増えていきます。

易経では、「陰」と「陽」は絶え間なく変化していくと考えます。

なので、易経は、今はいい時期だが、いずれうまくいかなくなる日も来るので用心しなさい、と警告するのです。


<䷒ 臨(りん="Nearing")>は、あなたが今、運気が良く、少し強引でも考えることを実行できる状況にいることを示しますが、幸運期はいずれ終わります。

運がいいうちに、できることを実行してしまいましょう。


◇ひと言アドバイス(象)

思慮深く温かく下の者に接しよう

この卦(Hexagram)は沢の上に、広大な大地が広がって沢を見下ろす形です。

この卦(Hexagram)のアドバイスは、上の立場にあるものは、下にいる者に配慮し、温かく受け入れて包容しなさい、となります。

<䷒ 臨(りん="Nearing")>は少々の強引さをもって邪悪たちを従わせる卦(Hexagram)ですが、相手を従えるには包容力が必要です。

あなたは組織内の反対者たちを従わせる必要が生じるかもしれませんが、下の者に対しては温かく見守りつつ思慮深くやるべきです。


爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)

臨(りん="Nearing")
⚋ 6th:陰:上6(Upper6)
⚋ 5th:陰:65
⚋ 4th:陰:64
⚋ 3rd:陰:63
⚊ 2nd:陽:92
⚊ 1st:陽:初9(First9)

※上6(Upper6)、65、64、63、92、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

◇1st 陽 初9(First9)

「彼は、邪悪たちを感動させて随わせる。正しいやりかたなので結果的に吉となるだろう。」

初爻 初九、咸じて臨む。貞にして吉なり。 (初九、咸臨。貞吉。)

(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


初9(First9)は「陽」で、剛毅で有能です。

彼は物事を開始する一番目の位置にいます。

上に64がいて、彼が従わせようとしている相手です。

彼と64は「陰」と「陽」で調和する対応関係です。

初9(First9)は64を感動させて、無理強いせずに従わせます。

彼は正しい方法で64を従属させますから、結果も正しく吉となります。


あなたが誰かを指導する場合とか、誰かと交渉する場合、相手を感動させることで同意させることができます。


◇2nd 陽 92

「彼は、誠意を示すことで君主を感動させてから邪悪を制圧する事業に臨む。吉であるし、大きな利益がある。」

二爻 九二、咸じて臨む。吉にして利あらざるなし。 (九二、咸臨。吉无不利。)

(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)


92は、君主から任命された司令官、この卦(Hexagram)の事業の責任者です。

65は君主で、92とは「陰」と「陽」で調和します。

65は92を信頼し、92は誠意をもって65を感動させつつこの事業に臨み、完遂することでしょう。

92は「陽」なのですが、本来は「陰」が入るべき二番目の位置にいます。

これは、92はやや強引に仕事を進める可能性を示します。

しかし、この卦(Hexagram)では服従させる必要のある「陰」は多く、92の強引さも必要なのです。

なのでおおいに吉となります。


この爻(Line)が出ると、あなたは事業の責任者に上から任命されるかもしれません。

上からの信頼はありますので、少し強引に任務を進めても大丈夫です。

あとは上層部を結果で感動させたらよいでしょう。



◇3rd 陰 63

「彼は、立場に能力が見合わない。彼は部下に媚を売って仕事をさせようとする。いいことにはならない。彼がすでに反省して態度を改めようとしているならば問題ない。」

三爻 六三、甘んじて臨む。利するところなし。即(すで)に之を憂いれば咎(とが)なし。 (六三、甘臨。无攸利。即憂之无咎。)

(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


63は、「陰(Yin)」です。

彼は下級管理職ですが、能力はなく、明らかにミスマッチした不正な小役人です。

彼は下卦(Lower trigram)である「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange"の主体でもあります。

「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange"は口を意味し、彼は口先だけで生きています。

彼と対応する上司は上6(Upper6)ですが、彼らは両方が「陰」なのでうまくいきません。

そこで、彼は上司に媚びを売り、目先の状況打開に臨み、保身を図ります。

彼は卑怯者です。

結果はいいことにはならないでしょう。

ただし、もし彼がそうした自分の在り方に気づき反省して改めようとしているのであれば、問題は起こっても軽微で済みます。


あなたは、上の者に媚びを売っていてはいいことになりません。

反省するならば今のうちです。


◇4th 陰 64

「彼は、最も正しい在り方で下の者に臨む。問題ない。」

四爻 六四、至りて臨む。咎なし。 (六四、至臨。无咎。)

(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)


64は君主のすぐ下にいる大臣です。

彼は「陰(Yin)」なので従順な性格、下の者に仕事をさせる立場にいます。

彼の性格と仕事はマッチしており、うまくいきます。

初9(First9)が彼の直接の部下で、彼とは「陰」と「陽」で調和します。

彼は部下を受け入れて仕事を任せるので、部下は彼によく従います。

下への臨み方としては最高です。

当然、事業はうまい方向に進むでしょう。


あなたは今の立場においては、サポート役に徹しましょう。

自分が仕事を実行せず、部下に任せてください。


◇5th 陰 65

「彼は、君主としての智慧をもって、能力ある家臣に仕事を任せて政治に臨む。偉大なる王の取るべき理想的な態度である。めでたい。」

五爻 六五、知あって臨む。大君之宜(ぎ)なり。吉。 (六五、知臨。大君之宜。吉。)

(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)


65は「陰」なのですが、自分を虚しくし、人に仕事を任せる智慧をもった君主です。

彼は、有能な家臣を信頼して仕事を任せるやり方で政治に臨みます。

彼は「陽」である92を宰相に抜擢します。

65と92は「陰」と「陽」で調和しますから、彼らの政治は国民に恩恵をもたらします。

五番目の位置は、本来的には強いリーダーシップを持つ「陽」が入るべき位置です。

しかし、君主が「陰」であっても、必ずしも不吉ではありません。

家臣に任せる「陰(Yin)」の君主も、調整型のすぐれたリーダーになりえます。


あなたは、とびぬけた才能には恵まれていないかもしれません。

しかし、才能ある部下と信頼関係を築き、部下に任せるならば、立派なリーダーになれます。


◇6th 陰 上6(Upper6)

「彼は、実力ある家臣たちに対して手厚い態度で臨む。吉となり問題も起こらない。」

上爻 上六、臨むに敦し。吉にして咎なし。 (上六、敦臨。吉无咎。)

(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)


上6(Upper6)は、最高の権威がある人物です。

一番上の位置はまた、この卦(Hexagram)の終極点、事業がほぼ完遂しつつある局面を意味します。

事業の実行責任者である初9(First9)と92が、彼に報告するために遠くから訪れました。

上6(Upper6)は、手厚い態度で彼らの功績を褒めたたえます。

ハッピーエンドです。


あなたが仕事の実行責任者ならば、権威ある上司から褒められるでしょう。

あなたが組織の総責任者ならば、功績あった部下を褒めてあげることで組織はより良くなるでしょう。

最終局面への臨み方がよければ、次なるステージも引き続きいい影響を受けます。



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