NO.18 蠱(こ="Correcting"):体制崩壊、再建事業


蠱(こ="Correcting")sb





蠱(こ="Correcting")


⚊ 6th:陽:上9(Upper9)
⚋ 5th:陰:65
⚋ 4th:陰:64
⚊ 3rd:陽:93
⚊ 2nd:陽:92
⚋ 1st:陰:初6(First6)

※上9(Upper9)、65、64、93、92、初6(First6)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

蠱(こ="Correcting"):体制崩壊、再建事業
蠱(こ="Correcting"):体制崩壊、再建事業。


構成の解説

上卦(Upper trigram)
「☶ 艮(ごん:Gen)」="Bound":山・障壁・行き止まり

下卦(Lower trigram)
「☴ 巽(そん:Xun)」="Ground":風・木・中に入り込む動き

上は「☶ 艮(ごん:Gen)」="Bound"、これは支配者がいいかげんで行き止まりの状況を意味する。

下は従順を意味する「☴ 巽(そん:Xun)」="Ground"だが、上の支配者に対して不満を持ちながら従う。

こういうことになってくると、やがて反乱がおこり、腐りきった体制は一気に崩壊する。

<䷑ 蠱(こ="Correcting")>は、皿の上で食べ物が腐って、たくさん虫が湧いているイメージ、「腐敗」、「体制崩壊」を意味する。

新しい体制が生まれるので「再建」の意味も出てくる。

この卦(Hexagram)は腐敗と崩壊、そして新しいものの再建という、重要な転換期について説明する。

卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)

「あなたの願いは大いにかなう。大川を徒歩で渉るような大冒険をしてもよい。チャンスが近づいているので逃してはならない。」

卦辞 蠱は、元いに亨る。大川を渉るに利あり。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日。 (蠱、元亨。利渉大川。先甲三日、後甲三日。)

この卦(Hexagram)は、「皿の上に食べ物が腐って、たくさん虫が湧いているイメージ」。

下からの要望を、上がまったく受け付けません。

この状況はすでに腐敗しているのです。

体制の安定が行き過ぎると、堕落が起こり、汚職が社会に蔓延します。

やがて下からの不満が大きくなって体制が崩壊します。

大混乱が発生するのですが、混乱の中から新しい体制が生まれます。

体制崩壊の時は、新しい機会がたくさん生まれます。

安定した状況ではありえなかった「新しい発想」が立ち上がります。

なので、あなたは大きな川を徒歩で渉るような大冒険をしてもよい時期です。

これは、国家でも、組織でも、家庭でも、そして個人の内面においてもあてはまります。

あなたがいる体制は崩壊しますが、新しいことを始めるチャンスです。

こういうチャンスは、めったにあることではありません。

易経の原文では、「甲(きのえ)に先だつこと三日、甲(きのえ)に後るること三日」=チャンスが近づいてきているから、逃してはならない!という、チャンス到来の表現が使われています。

めったにないチャンスを生かしましょう。

◇ひと言アドバイス(象)

事業再建にあたっては安定を目指そう

「☴ 巽(そん:Xun)」="Ground"は風、「☶ 艮(ごん:Gen)」="Bound"は山です。風が山に吹き付けると、草木は吹き飛ばされて散乱します。

体制崩壊は、多くの難民を生みます。

体制崩壊した状況を再建するために必要なのは、公布金を配ったり、公共投資をすることで人々の生活を安定させることです。

中国では、歴代王朝が崩壊すると大混乱が起こり、多くの難民や流民が発生しました。

そうした中から頭角を現した者たちが争いながら、最終的に人民すべてを食わせて安定をもたらしたものが新しい皇帝となりました。

新王朝や新体制、新組織が成立するには、指導者は民衆の生活を安定させる義務があるのです。

あなたも再建にあたっては安定を目標にしましょう。


爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)

蠱(こ="Correcting")
⚊ 6th:陽:上9(Upper9)
⚋ 5th:陰:65
⚋ 4th:陰:64
⚊ 3rd:陽:93
⚊ 2nd:陽:92
⚋ 1st:陰:初6(First6)

※上9(Upper9)、65、64、93、92、初6(First6)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

◇1st 陰 初6(First6)

「あなたは父が崩壊させた体制の再建をまかされる。できのいい子が再建を行えば、父のおかした失敗は問題なくなる。用心深く臨むならば、最終的に状況は良くなる。」

初爻 初六、父の蠱(こと)に幹たり。子あれば、考咎なし。厲めば終いに吉。 (初六、干父之蠱。有子、考无咎。厲終吉。)

(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


<䷑ 蠱(こ="Correcting")>では、父や母がイメージとして出てきます。

初6(First6)は崩壊が始まった状況にいます。

初6(First6)は「陰」です。彼はこつこつと仕事を処理していくタイプの人。

ここでは父親の事業が失敗し、彼は再建を任された息子です。

現段階では崩壊はまだひどくはないので、彼が再建を地道にやるならば、十分に父の失敗を回復させることができます。

ただし、崩壊しかかっているので危険な状況です。

十分に注意してやりなさい。

あなたは最終的にきっとやり遂げることができるでしょう。


◇2nd 陽 92

「彼は母が失敗した事業の再建をまかされる。正論にこだわって処理してはならない。」

二爻 九二、母の蠱に幹たり。貞にすべからず。 (九二、干母之蠱。不可貞。)

(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)


92は「陽」、強い息子です。

対応しているのは五番目の位置にいる65、彼女は「陰」、女性の上位者、母親です。

これは母親の事業の失敗を、息子が処理するイメージです。

92は聡明で積極的、さらに二番目の位置にいるので彼は中庸な人物です。彼は再建処理をうまくやるでしょう。

ただし、彼が対応する相手は母親なので、ストレートに正論を彼が言っても、母親は感情的になって聞き入れないでしょう。

女性は正論よりも感情に従うものです。

また、母親を彼が叱ることは親子の義理にも反します。

彼は母親に対しては、穏やかに、タイミングを見て対処すべきです。

そうすればうまくいきます。


◇3rd 陽 93

「あなたは父のおかした失敗の後始末を任される。少し後悔するようなことも出てくるだろうが、最終的には大きな問題はないだろう。」

三爻 九三、父の蠱に幹たり。小しく悔いあり、大なる咎なし。 (九三、干父之蠱。小有悔、无大咎。)

(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


93は「陽」です。彼は積極的な強さを持った人。

彼がいる場所は三番目の位置。

この場所は実務責任者を意味します。

彼は単刀直入に事の処理を進めていきますので、けっこう処理の過程でトラブルも起こってくるでしょう。

しかし、崩壊したことの再建にはある程度の強引さや大胆さも必要です。

彼は立場上は正しいので、最終的な結果としては大きな問題は起こらないでしょう。


◇4th 陰 64

「彼は父の失敗の後始末を手ぬるくやる。このまま事業の再建を行えば失敗する。恥をかくことになるだろう。」

四爻 六四、父の蠱を裕うす。往けば吝を見る。 (六四、裕父之蠱。往見吝。)

(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)


64は「陰」です。彼は気弱で主体性に欠けます。

立場上も、おとなしく振る舞ってしまう四番目の位置にいます。

優柔不断で自分に甘い人間ですから、父の事業が崩壊しているのを見ても、改善しなければならぬことを指摘できません。

父の会社を引き継いだ息子が、腐りきった幹部たちにものが言えず、結局会社が倒産してしまう状況はよく発生します。

彼は自分を反省しなければ、再建は望めませんし、失敗して大きな痛手を受けるでしょう。

警告です。


◇5th 陰 65

「彼は父の失敗の後始末を任される。無事にやり遂げて栄誉を受ける。」

五爻 六五、父の蠱に幹たり、用って誉れあり。 (六五、干父之蠱、用誉。)

(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)


65は「陰」、穏やかで状況に従順な人物です。

彼は上卦(Upper trigram)の中心にいますから、中庸な君主です。

彼の部下として、対応関係にある92がいます。

92は「陽」で、有能で積極的で活発な人物。しかも92も中庸の美徳があります。

65は92を再建の責任者に任命します。

再建事業は成功するでしょうから、65は大きな栄誉を受けます。

事業を行うにあたり、有能なものに権限と資金を与えて、実行役をさせることは君主の役目です。


そのようであれば、あなたは成功します。


◇6th 陽 上9(Upper9)

「あなたの周辺では、体制崩壊と再建が起こっている。しかしあなたは、王に仕えてはならない。出来事の外にいて高尚さを維持すべきである。」

上爻 上九、王侯に事えず。其の事を高尚にす。 (上九、不事王侯。高尚其事。)

(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)


上9(Upper9)は「陽」、一番上の位置にいます。

一番上の位置は、地位がありません。

上9(Upper9)に社会的地位があれば、彼は崩壊や再建という大混乱のどこかに関わらねばなりません。

しかし地位がない自由な立場の上9(Upper9)は、力のある部外者として堂々と振る舞えます。

彼はあえて王侯に仕えず、混乱に関わらず、悠然として隠者のごとく、生き方を高尚なものとすればよろしい、と易経は判断します。


あなたの周りでは混乱が起こっているかもしれませんが、あなたは関わらずに自分のペースで生きましょう。


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