NO.31 咸(かん="Conjoining"):感応する、心が通じる 

咸(かん="Conjoining")シンボル






咸(かん="Conjoining")



⚋ 6th:陰:上6(Upper6)
⚊ 5th:陽:95
⚊ 4th:陽:94
⚊ 3rd:陽:93
⚋ 2nd:陰:62
⚋ 1st:陰:初6(First6)

※上6(Upper6)、95、94、93、62、初6(First6)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

咸(かん="Conjoining"):感応する、心が通じる
咸(かん="Conjoining"):感応する、心が通じる


構成の解説

上卦(Upper trigram)は、
「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange":水が流れ込みたまっている様子、沢・悦び・口

下卦(Lower trigram)は、
「☶ 艮(ごん:Gen)」="Bound":山・障壁・行き止まり

下にある「☶ 艮(ごん:Gen)」="Bound"は、若い男を意味する。

上にある「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange"は、若い女を意味する。

この卦(Hexagram)は、若い男女が感応して結ばれる、というイメージ。

上の中心である95が「陽」で、下の中心である62が「陰」なので、彼らは「陰」と「陽」で調和する。

そこから、結婚とか、カップルといったイメージが出てくる。

この卦(Hexagram)は理屈抜きの感応を意味していて、たとえば一目ぼれなど直観的な感応である。

これは男と女が結婚する原理を表す。

人間関係やビジネスにおける縁の根底には<䷞ 咸(かん="Conjoining")>があると易経では考える。

なお、易経は古来、上巻、下巻に別れているが、<䷞ 咸(かん="Conjoining")>は下巻の最初の卦(Hexagram)である。

男と女が交感することで家庭が発生するから、人間界の始まりを意味する。


卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)

「あなたと相手が互いに感応しあえば、物事はうまく進展する。男女それぞれの正しさをもって感応し合うべきである。あなたは妻をめとるならば吉。」

卦辞 咸、亨(とお)る。貞(ただ)しきに利あり。女を取(めと)るに吉。 (咸、亨。利貞。取女吉。)

男と女が感応して結婚し、家庭という社会の最小単位が成立します。

この卦(Hexagram)は、下が山で、これは若い男を意味します。

上は川の流れる沢で、若い女を意味します。

猛々しい若い男が、若い女性の下にへりくだってひざまづくことで誠意を示し、それに若い女は感応し、悦び受け入れる、という構成です。

古代中華世界における婚礼では、男が女の家に馬車を引いていき、へりくだって御者をつとめ、女を迎え入れるという風習があったといいます。

世界的に見ても男女の婚礼というのはなぜか男がへりくだって、丁重に女を迎え入れるもののようです。

生物界では、オスを受け入れるか否かの決定権はメスにあります。

人間の男女の婚姻においても、男が丁重にお願いして女を迎え入れるというのは理にかなっています。

この卦(Hexagram)が示す感応は、直観による感応のことです。

たとえば男女のことで言えば、一目ぼれで相思相愛になる、というような現象のことです。

直観は、どんな場面でも大切です。

商談相手を一目見ただけで信頼できそうだ、とあなたが感じるならば、最後まで取引はうまくいくものです。

この卦(Hexagram)が出たら、あなたはなにか相手があることを始めようとしています。

男女交際かもしれませんし、新しい商取引かもしれません。

あなたがもし、相手に対して直感でいい相手だと感じるならば、問題なくうまくいきます。

あなたはこうした直感を大事にしてください。

男女関係の場合は、男が妻を迎えるのも、女が嫁ぐのも、めでたい結果となります。

ただし、あなたが相手に対して好感を持つだけでなく、相手もあなたに対して好感を持っていることが大切です。

この卦(Hexagram)のテーマは両者が互いに好感をもつことです。

この点で判断してください。

易経はこう書いています。

聖人は、人々を感応させて天下和平をなしとげる。

感応ということの道理をあなたがよく観察すれば、天地万物の秘密を知ることもできる、と。


◇ひと言アドバイス(象)

自分を空しくして相手を受け入れよう

この卦(Hexagram)は、山の上に水の流れがあります。

山は乾燥しているので、上に水があれば、水は山の中をしみ込んでいき、山と水の流れは感応し合います。

山が水を受け入れるほど中が乾いて空虚であるように、あなたが誰かと感応するためには、自分を虚しく、先入観がない状態にすることが重要です。

自分を空っぽにして相手を受け入れるならば、いい感応は起こりやすくなり、いい感応が起これば新しい可能性が生まれます。

自分を空しくすることで相手を受け入れましょう。


爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)

咸(かん="Conjoining")
⚋ 6th:陰:上6(Upper6)
⚊ 5th:陽:95
⚊ 4th:陽:94
⚊ 3rd:陽:93
⚋ 2nd:陰:62
⚋ 1st:陰:初6(First6)

※上6(Upper6)、95、94、93、62、初6(First6)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

◇1st 陰 初6(First6)

「あなたの足の親指が感応して震えている。」

初爻 初六、其の拇(おやゆび)に咸(かん)す。 (初六、咸其拇。)

(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


初6(First6)は、卦(Hexagram)の一番下なので、足の親指が感応して震える、という表象です。

初6(First6)と対応する四番目の位置に、94がいます。

彼らは「陰」と「陽」で調和しますので、互いに運命の相手です。

初6(First6)は、遠くから94を見た瞬間、電気が走ったように感応し、足の親指がしびれました。

しかし、94は上卦(Upper trigram)の一部で、初6(First6)とは住む世界が異なります。

初6(First6)は平民、94は貴族の娘です。

また初6(First6)は「陰」で、力がありません。

彼は、足の親指が感応していても、94のもとへ駆けつけるだけの能力がないのです。

この爻(Line)が出たら、あなたは今は機会が来るのをおとなしく待つしかありません。

<䷞ 咸(かん="Conjoining")>は原則的に、じっとしていることで誠意が伝わる卦(Hexagram)です。

あなたが真心をもって待てば、二人の関係は展開していく可能性はあります。


◇2nd 陰 62

「あなたの足のふくらはぎが感応している。あなたは行動すれば凶。じっとしていれば吉。」

二爻 六二、其の腓(こむら)を咸(かん)す。凶。居れば吉。 (六二、咸其腓。凶。居吉。)

(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)


62は、足のふくらはぎを意味します。

ふくらはぎは、足が動くときまず最初に動く部位です。

62には、対応する位置関係に95がいます。

彼らは「陰」と「陽」で調和しますので、お互いに相思相愛になりえます。

62は、今すぐにでも95のもとへ飛んでいきたい気持ちです。

しかし、95は上卦(Upper trigram)におり、62とは住む世界が違っています。

62は「陰」ですので、彼は本来、中庸で機会が来るのを待つべき性格です。

もし彼が相手のもとに飛んでいくとしたら、彼本来の性質に合いません。


そこで易経の判断は、明解です。

あなたは衝動的に動こうとすれば凶、じっとして待つのであれば吉。

感応が発展するには、「間」が必要です。

しつこく相手に迫るのは、感応を阻害します。

今は、相手も感応してくれるのをじっと待つべき時です。

待ちましょう。


◇3rd 陽 93

「あなたは足のももが感応している。あなたはいつも他人に従って行動している。このままでは恥ずかしいことになる。」

三爻 九三、其の股(もも)に咸(かん)す。執(と)ること其れ随う。往けば吝。 (九三、咸其股。執其随。往吝。)

(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


93は、足のももを意味します。

足のももは、従属的な部位で、足のふくらはぎが動くとそれに従属して動きます。

足のももには主体性がありません。

93は、初6(First6)と62が動こうとするのにつられて動き出そうとします。

93は周りが気になって動こうとしています。

たとえば周りの友人たちに恋人ができたので、自分も恋人を作らねば、と彼は焦っています。

あるいは、周りの友人が就職活動を始めているので自分もしなければならないと、と彼は焦るのです。

93はしかし、止まることを意味する下卦(Lower trigram)の主体です。

彼は本来は山のようにじっとして、動くべきではありません。

さらにこの卦(Hexagram)は、じっとしていることで感応が起こるという意味です。

彼が周りに影響されて動けば、恥をかくでしょう。


この爻(Line)が出たら、あなたは自分本来の姿をよく考えてみてください。

まわりに合わせて動くのはあなたらしくありません。


◇四爻(陰位)

「あなたは、今一度、自分がどう行動したら正しいのかを考え直せば後悔しなくて済む。もんもんと悩んで行ったり来たりしていると、友人があなたの悩みに感応して助けてくれる。だがそれでは、あなたの行くべき道はまだ遠い。」

四爻 九四、貞(ただ)しければ吉にして悔い亡(ほろ)ぶ。憧憧(しょうしょう)として往来すれば、朋(とも)爾(なんじ)の思いに従う。 (九四、貞吉悔亡。憧憧往来、朋従爾思。)

(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)


94は「陽」ですが、「陰」が入るべき四番目の位置にいます。

彼は立場上、おとなしくしているべきなのですが、彼の性格は「陽」であるため、なんでも積極的にやろうとします。

彼は立場と性格がマッチしておりません。

94がこの卦(Hexagram)の主体で、身体の部位としては心臓を意味します。

心臓は常に動くもの。


しかし、この卦(Hexagram)においては、彼がじっとしていることで偉大なる感応が起こります。

彼は動いては、この卦(Hexagram)の原則に反します。

彼は今は待たねばなりません。

彼は待たねばならないのですが、気持ちが落ち着かず、悶々として行ったり来たりしていると、それは友達に感応します。

友人たちが集まってきて、いろいろと彼の相談に乗ってくれるでしょう。


彼がそわそわしていることで感応して友人が集まるというのは、本来のこの卦(Hexagram)の理想に反します。

彼は本当の感応に至るにはまだ遠い状況にあります。


この爻(Line)が出たら、あなたは反省すべきです。

待つことで深い感応が起こることを考えてみてください。

そわそわしないで。


◇5th 陽 95

「あなたは背中に感応しているが、外部に感応しているわけではない。後悔はしないだろうが、しかし。」

五爻 九五、其の脢(せじし)に咸(かん)す。悔いなし。 (九五、咸其脢。无悔。)

(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)


95は、心臓の裏の背筋です。

95は、前に展開している世界からは背を向けていて、外界からの刺激には無感動です。

彼が背中に感応するのは、個人的で内面的な理由に感応していることを意味します。

95は、自己完結した人物で、あまり外部から感応は受けません。

彼は自分の内面にしか感応しません。


この卦(Hexagram)は、人と人とが感応しあって新しい関係や状況が生み出される状況を意味します。

人と人の間に発生する感応は、喜びももたらしますし、苦しみや悲しみや後悔ももたらします。

95は他者との感応を拒否しているので、苦しみも悲しみも後悔もありませんが、喜びもありません。


易経は次のように補足します。

95のような生き方は、人の理想からすれば終末である、と。

感応とは、互いが影響を与え合うことです。


あなたが相手に影響を与え、相手から影響を受け、時には相手と混ざり合うことで世界は成り立ち、そして新しいものが生まれてます。

あなたが外部から背を向けていれば、後悔はないにせよ、発展もまたありません。

よく考えてみてください。


◇6th 陰 上6(Upper6)

「あなたは、あご、ほほ、舌に感応し、言葉で相手に感応を求める。誠意に欠けている。」

上爻 上六、其の輔頬舌(ほきょうぜつ)に咸(かん)す。 (上六、咸其輔頬舌。)

(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)


上6(Upper6)は、<䷞ 咸(かん="Conjoining")>の終極点ですし、上卦(Upper trigram)である「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange"の終極点でもあります。

上6(Upper6)は、口を意味する「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange"の舌先にあたります。

彼は口先だけの人間です。

彼は「陰」なので誠意もありません。

<䷞ 咸(かん="Conjoining")>のテーマは、じっとしていること、黙っていることで相手に誠意が伝わり、相手が感応することでした。

この卦(Hexagram)の終極点においては、この原則が破られ、あご、ほほ、舌が感応して言葉巧みに、相手の気を引こうとしています。

彼に言葉が多いのは、誠意が欠けているからです。

本当に人を心から動かす直感的な感応は発生しないでしょう。


易経では、この爻(Line)の吉凶判断はつけていませんが、いいことにならないのは明白です。

あなたは言葉は巧みですが、誠意も実体もありません。

本当の感応に必要なものは、言葉ではなく、行動で相手にへりくだることです。

よく考え直してみてください。




卦辞
咸、亨(とお)る。貞(ただ)しきに利あり。女を取(めと)るに吉。
(咸、亨。利貞。取女吉。)
初爻
初六、其の拇(おやゆび)に咸(かん)す。
(初六、咸其拇。)
二爻
六二、其の腓(こむら)を咸(かん)す。凶。居れば吉。
(六二、咸其腓。凶。居吉。)
三爻
九三、其の股(もも)に咸(かん)す。執(と)ること其れ随う。往けば吝。
(九三、咸其股。執其随。往吝。)
四爻
九四、貞(ただ)しければ吉にして悔い亡(ほろ)ぶ。憧憧(しょうしょう)として往来すれば、朋(とも)爾(なんじ)の思いに従う。
(九四、貞吉悔亡。憧憧往来、朋従爾思。)
五爻
九五、其の脢(せじし)に咸(かん)す。悔いなし。
(九五、咸其脢。无悔。)
上爻
上六、其の輔頬舌(ほきょうぜつ)に咸(かん)す。
(上六、咸其輔頬舌。)

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