NO.3 屯(ちゅん="Sprouting"):芽生え、生みの苦しみ

屯(ちゅん="Sprouting")シンボル






屯(ちゅん="Sprouting")


⚋ 6th:陰:上6(Upper6)
⚊ 5th:陽:95
⚊ 4th:陰:64
⚋ 3rd:陰:63
⚊ 2nd:陰:62
⚊ 1st:陽:初9(First9)

※上6(Upper6)、95、64、63、62、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

屯(ちゅん="Sprouting"):芽生え、生みの苦しみ
屯(ちゅん="Sprouting"):芽生え、生みの苦しみ。

構成の解説

上卦(Upper trigram)
「☵ 坎(かん:Kan)」="Gorge":水・雨・雲・泉・危険・落とし穴

下卦(Lower trigram)
「☳ 震(しん:Zhen)」="Shake":雷・地震・物事の胎動・妊娠

<䷂ 屯(ちゅん="Sprouting")>は、芽生え。物事が始まって、展開しようとするが、まず形になるためには生みの困難が伴うことを意味する。
下にある「☳ 震(しん:Zhen)」="Shake"は、物事が誕生し、ぐんぐん上へ向かって展開しようとする創造的な力である。
が、上には「☵ 坎(かん:Kan)」="Gorge"、すなわち落とし穴のような困難が待ち受けていてそれにハマってしまう形。
非常に創造的な動きが下にある。大きな成果を生み出す可能性を秘めてはいるが、しかし何事も新しいものが生み出されるには困難が伴う。
ちょうど創業や新しいプロジェクトを始めたばかりの時の、最初の苦労を意味している。

卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)

「あなたの願いは大いに実現する。この状況にふさわしくふるまうなら恩恵を受ける。今はまだ動くべきではない。あなたの代行役をを任命するならば、恩恵を受ける。」

卦辞 屯、元いに亨る。貞しくして利あり。用って往くところ有るなかれ。侯を建つるに利あり。 (屯、元亨。利貞。勿用有攸往。利建侯。)

<䷂ 屯(ちゅん="Sprouting")>とは、芽生えを意味します。

下にある「☳ 震(しん:Zhen)」="Shake"は、「陰」と「陽」のエナジーが混ざり合い、新しい物事が発生することを意味します。

植物の種が芽を出すイメージです。

しかし、上にある象徴、「☵ 坎(かん:Kan)」="Gorge"は、危険な落とし穴。

植物の種が萌芽しますが、地中から顔を出さねば成長はできません。

地中から芽を出すということは、最初にしてもっとも困難な試練です。

すべての新しいものは、その始まりが最も困難なのです。

しかし新しい物事が発生するのは、創造的で発展性を秘めています。確かに生みの困難を乗り越える過程で、多くのことが準備されて、ようやく初めて物事は実現していきます。

生みの苦しみを乗り越えれば、あなたの事業は高みに昇り、雨を降らせ、世界に恵みを与えることでしょう。

なのであなたの願いが実現する、と易経は言います。

しかし、百里の道も一里からで、今はまだ成果が出るかでないかわからず、あなたにとって大事で微妙な時期です。

あなたはまだ積極的な行動を実行できる段階ではありません。

そこで、「今はまだあなたは積極的に行動してはならない」と易経は警告します。

まずは準備が優先です。

創業の準備で最も必要なことは、人事です。

役割分担をはっきりさせ、誰がどういう責任をもつかを割り振ります。

基本方針を明確にする必要もあります。

そういったことを、易経は「あなたの代行役をつとめる責任者を任命する(諸侯を任命すると利益がある)」と表現します。

下準備からしっかりやっていきましょう。


◇ひと言アドバイス(象)

最初に役割分担を決めて、計画をしっかり練ろう

<䷂ 屯(ちゅん="Sprouting")>は、恵みの雨をもたらす雨雲が空にありますが、まだ雨は降らない状況です。

物事には順番がありますから、まずは役割分担を決めて、計画をしっかりたてましょう。一つずつ整備していきましょう。

それが世を救うことにもつながります。

会社や組織の創業期、あるいは新しいプロジェクトの発足期ですので、まずは念入りな準備から始めましょう。


卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)

屯(ちゅん="Sprouting")
⚋ 6th:陰:上6(Upper6)
⚊ 5th:陽:95
⚊ 4th:陰:64
⚋ 3rd:陰:63
⚊ 2nd:陰:62
⚊ 1st:陽:初9(First9)

※上6(Upper6)、95、64、63、62、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

1st 陽 初9=First9(初爻:陽位)

「あなたは、躊躇して立ち止まる。今は行動を慎み、今後の準備を進めれば恩恵を受ける。あなたの代役を務める責任者を任命すると恩恵を受ける。」

初爻 初九、磐桓す。貞に居るに利あり。侯を建るに利あり。 (初九、磐桓。利居貞。利建侯。)

(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


初9(First9)は、この卦(Hexagram)の中心人物です。

創造的で前進する「陽」が、「陽」いるべき一番目の位置におり、性質と立場が合致した人物です。

下卦(Lower trigram)は「☳ 震(しん:Zhen)」="Shake"であり、積極的に上に昇ろうとするエナジー。

初9(First9)は、そのエナジーそのもの。

彼は仕事を進めようとします。

が、しかし初9(First9)と対応関係にある64は「陰」で、初9(First9)とは気が合うものの、「☵ 坎(かん:Kan)」="Gorge"の一部。

危険な落とし穴です。

この状況ではあなたは躊躇して前に進めません。

こういうときは、自分の立場や能力にふさわしい行動をとるべきです。

まずは最初に、役割分担を決めましょう。

あなたはタイアップ相手とよく話し合い、条件をはっきりと決めていくべきです。

初9(First9)は、高い能力と冷静な判断力があるにもかかわらず、社会の最下層の身分にいる人物です。

彼はすべての人々から慕われ、愛されますから、いつかはリーダーとなる人です。

なのでこの爻(Line)が出たら、あなたがリーダーシップをとってもいいでしょう。


◇二爻(「中」位置 陰位)

「彼女は、難しい状況が起こり、いきつもどりつする。彼女が乗る馬車は馬たちがばらけてしまい一向に前に進まない。彼女は若い男に追いかけられて混乱が生じている。彼は彼女を傷つけるつもりはなく、彼女と結婚したがっている。しかし彼女は正しい生き方を守り、若い男とは結婚しない。十年が経過した。混乱した状況は治まった。彼女は本来の相手と結婚する。」

二爻 六二、屯如(ちゅんじょ)たり、邅如(てんじょ)たり、乗馬班如(はんじょ)たり。寇(あだ)するにあらず婚媾(こんこう)せんとす。女子貞にして字(じ)せず、十年にして乃ち字す。 (六二、屯如、邅如、乗馬班如。匪寇婚媾。女子貞不字、十年乃字。)

(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)


62は「陰」で、「陰」が入るべき二番目の位置にいます。

62は冷静で正しく中庸な女性を女性です。

さて、62には結ばれるべき95がいて、二人は相思相愛です。

ところが近くにいる初9(First9)が横恋慕し、62に強烈なアプローチをしてきて、62は大混乱に陥ります。

混乱は続き、状況は一進一退、彼女が乗る馬車は馬たちがばらけてしまい一向に前に進みません。

初9(First9)は62と結婚したくて彼女を追いかけているだけ、彼は害意はないのです。

62は冷静な判断ができる女性ですので、あくまで正しい相手である95と結婚することを望み、初9(First9)とは結婚しません。

十年の月日が流れます。

状況は落ち着き、やがて本来の相手であった95が彼女を迎えに来ます。

こうしてようやく62は95に嫁ぎます。

占いはこの物語から判断してください。


3rd 陰 63(三爻:陽位)

「彼は鹿狩りに出掛けるが従者がいない。彼はただやみくもに林の中に突入していく。あなたは賢明ならば獲物をあきらめたほうがよほどいい。このまま進んでいけば大恥をかく。」

三爻 六三、鹿に即(つ)くに虞(ぐ)なし。ただ林中に入る。君子ほとんど舎(す)つるにしかず。往けば吝。 (六三、即鹿无虞。惟入于林中。君子幾不知舎。往吝。)

(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


63は、積極的な行動を要求される三番目の位置にいます。ですが、63は判断力がなく優柔不断の「陰」です。63は中庸ではありません。

対応関係にある協力者は上6(Upper6)ですが、上6(Upper6)も「陰」です。上6(Upper6)は能力がないので、63は上6(Upper6)からは援助を受けることができません。

これはあたかも、従者がいない鹿狩りです。案内する従者がいないのに、鹿を追って林の中に突入していくような状況です。このままいけば林の中で道に迷い、あなたは大恥をかきます。

あなたが賢明ならば、獲物を追うことをあきらめるべきなのです。

自分の専門外の仕事をするときは、案内役がいないならば中止すべきです。冷静に判断してください。


4th 陰 64(四爻:陰位)

「彼女が乗る馬車は馬たちがばらけてしまい一向に前に進まない。彼女は誰と結婚するべきか迷って前に進めない。彼女は思い切って運命の相手と結婚するのであれば、大いにめでたい。彼女は大いなる恩恵をうける。」

四爻 六四、乗馬班如(はんじょ)たり。婚媾を求む、往けば吉、利あらざるなし。 (六四、乗馬班如。求婚媾、往吉无不利。)

(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)


64は「陰」で、「陰」が入るべき四番目の位置に正しく入っています。64は性質従順な女性を意味します。

対応関係で言えば、この女性は初9(First9)の男性とマッチしており、相思相愛関係になり得ます。初9(First9)は卦(Hexagram)の一番下の位置にいるので、身分が低い男です。

が、64のすぐ近くに、95がいます。彼も「陽」で彼女の仕事上の上司です。「陰」である64と「陽」である95は気が合います。

64は、二人の男のどちらと結婚すべきか悩みます。考えが錯綜して混乱する様はたとえるならば、彼女が乗る馬車は馬たちがばらけてしまい一向に前に進まない、というような状況です。

しかし、もともと彼女の運命の相手である縁ある初9(First9)の男は、64をもとめて上へ昇ってこようと努力しています。

彼女は高望みをするのではなく、初9(First9)を選ぶべきです。

あなたがそうした方向へ向かうならば結果は吉となります。

結婚に限らず、取引先を選ぶ場合でも同様です。


5th 陽 95(五爻:「中」位置:陽位で君位)

「彼は、施しを出し渋って窮地に陥っている。彼の立場や性質は正しく、小さいことをするならばいい結果になる。だが、大きいことをやろうとすれば凶。」

五爻 九五、其の膏(あぶら)を屯(ちゅん)す。小貞は吉、大貞は凶。 (九五、屯其膏。小貞吉、大貞凶。)

(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)


95は「陽」です。彼は正しく君位についていて、中庸ですから冷静な判断もできるのですが、上卦(Upper trigram)である「☵ 坎(かん:Kan)」="Gorge"の穴にハマっています。

彼は困難な状況にいるので余裕がありません。民への施しも出し渋っています。

95と協力関係にあるのは62ですが、「陰」が「陰位」にいます。力不足であり、62では95を助けることはできません。

そうするうちに、一番下から発生した初9(First9)が勢力を拡大してきて人心はみな初9(First9)についてしまっております。

さて、こういう状況なので、95は小さい事業ならば実行していいでしょう。彼は性質は明るく、立場は正しいので、それなりにいい結果となります。

が、彼が大事業をやろうとすれば、どうやっても大失敗で凶、致命傷となりかねません。

情勢というものは、ただ頑張るだけではどうにもならぬこともあることを、良くわきまえるのは大切です。


6th 陰 上6=Upper6(上爻:陰位で無位)

「彼が乗る馬車は馬たちがばらけてしまい一向に前に進まない。彼は行き詰まって血の涙を流すような状況に陥る。」

上爻 上六、乗馬班如たり。泣血漣如たり。 (上六、乗馬班如。泣血漣如。)

(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)


上6(Upper6)は力ない「陰」のくせに一番高いところに昇っています。

彼は上卦(Upper trigram)である『☵ 坎(かん:Kan)』="Gorge"の究極の崖っぷちに立たされています。

パートナーシップがあるはずの63は、上6(Upper6)と同じ「陰」で対応しません。

上6(Upper6)の部下たちはバラバラの方角に行こうとする馬のようで、統一した方向性を失っているので、なに一つ物事は進みません。

上6(Upper6)は恐れて憂い、血の涙を流すような状況ですから、彼はもはや長続くないでしょう。

易経では、時にこういう救いようのない判断が出ることがあります。

しかし、それはあくまでも、あなたが今の在り方で進むならば、という前提です。

未来とは実は確定したものではありません。

並行世界として、別の未来もまた存在するというのが易経の根本的な考え方です。

なので、こういう最悪の判断が出た場合は、あなたは根本的なところから自分を見直してみることです。

反省することで未来を変えるために易経は存在しています。


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