NO.25 无妄(むぼう="Without Embroiling"):宿命、望外の福

无妄(むぼう="Without Embroiling")シンボル






无妄(むぼう="Without Embroiling")


 6th:陽:上9(Upper9)
⚊ 5th:陽:95
⚊ 4th:陽:94
⚋ 3rd:陰:63
 2nd:陰:62
⚊ 1st:陽:初9(First9)

※上9(Upper9)、95、94、63、62、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

无妄(むぼう="Without Embroiling"):宿命、望外の福
无妄(むぼう="Without Embroiling"):宿命、望外の福


構成の解説

上卦(Upper trigram)は、「☰」乾("Force"):天・始まりのエネルギー・男性原理・積極・能動的

下卦(Lower trigram)は、「☳」震("Shake"):雷・地震・物事の胎動・妊娠


下で生まれたエナジーの振動が上へ進み、上には天がある、というイメージ。

天の下に雷が発生し、万物が生成される。

この卦(Hexagram)は、「正しい」とも「健全」とも意味が違う。

仕方がないので消極的に元々の位置に戻ったら、思わぬ幸運を得る、という状況を意味する。

人間界の不思議さを表す。


卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)

「あなたの願いは大いにかなう。従順に一歩退くならばいい状況がくる。退かなければ逆に災いがある。進もうとすれば不利となる。」

卦辞 无妄、元いに亨(とお)る。貞(ただ)しきに利あり。其(そ)れ正にあらざれば眚(わざわい)あり。往(ゆ)くところあるに利あらず。 (无妄、元亨。利貞。其匪正有眚。不利有攸往。)

<䷘ 无妄(むぼう="Without Embroiling")>とは、状況に逆らわない、という意味です。

「誠実であること」という意味ではありません。

他に選択肢がない状況を意味します。

ですが、やむを得ない選択が、幸運につながります。

一歩退くことで、争いや困難が解決することを意味しています。

<䷅ 訟(しょう="lawsuit")>という卦(Hexagram)が変化して成立したのがこの卦(Hexagram)です。

<䷅ 訟(しょう="lawsuit")>





⚊ ←強情!
ここで、争いのもととなっているのは、92です。
92が一歩引き下がると<䷘ 无妄(むぼう="Without Embroiling")>となります。

<䷘ 无妄(むぼう="Without Embroiling")>



⚊ ←後退

争いを引き起こす強情さが下に退き、それにより62と95は、「陰」と「陽」で調和するようになりました。

だからこの卦(Hexagram)は、緊張がなくなり、うまくいく形が開けました。


この卦(Hexagram)は、強情さの放棄が幸運につながることを示します。

あなたはなにか目的の達成にこだわっています。

しかし、あなたの目的追求が、争いを引き起こし、不運をもたらしています。

目的が達成できないので、あなたは目的達成を諦めるしか選択肢はありません。

あなたは失望するかもしれませんが、結果的に目的を諦めることで緊張状態は緩和され、いい状況が来ます。

いわば、やむをえず退いたことですべてうまくいくようになる、という状況は、あなたの天命です。

退くことは不本意であっても、退くことで全体がいい方向に行くのであれば、自分を抑えてうまくいく方向性を選択すべきです。

当初あなたが考えた目的は達成できないかもしれませんが、あなたも、周りの人もいい状況を得るのが望ましいことです。


この卦(Hexagram)が出たら、それを考えてみてください。


◇ひと言アドバイス(象)

流れに逆らわないように生きよう

天の下で雷が光ると、万物が生み出されます。

万物にはそれぞれの属性や特性があって、それ以外のものにはなれません。

猫は猫で、犬にはなれません。

魚は魚で、山には住めません。

すべてのものには「そうせざるをえない」天命があります。

<䷘ 无妄(むぼう="Without Embroiling")>は、然るべくしてそうするしかない、という意味です。

猫は犬にはなれないし、魚は山には住めませんから、あなたは不自然なことはしたくてもできません。

これはあなたの人生にもあてはまります。

不本意でもこうするしかない、というシチュエーションは多いのです。

私たちは冷静にバランス感覚をもって状況を観察し、全体の流れに逆らわない方向を選択するべきです。

これは教育にも当てはまります。

それぞれ子供の特性や属性に合わせて教えていくのが賢明な教育です。

特性や属性を無視して教育しようとしても無意味です。


全体の大きな流れに合わせて生きましょう。


爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)

无妄(むぼう="Without Embroiling")
 6th:陽:上9(Upper9)
⚊ 5th:陽:95
⚊ 4th:陽:94
⚋ 3rd:陰:63
 2nd:陰:62
⚊ 1st:陽:初9(First9)

※上9(Upper9)、95、94、63、62、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

◇1st 陽 初9

「あなたは、一歩退いたので正しい存在になった。自然な宇宙の流れに従っている。あなたはこの調子で進めば幸運をつかむ。」

初爻 初九、无妄(むぼう)なり。往けば吉。 (初九、无妄。往吉。)

(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


初九(First9)は、もともとは二番目の位置にいて、強情をはって周囲と対立していました。

彼は行き詰ってしまいました。

彼はやむを得ず一歩引き下がり、今の位置に来たのです。

彼は不本意ですが、引き下がったことで「陽」が一番目の位置に入り、正しい形になりました。

また、二番目の位置が「陽」から「陰」に変わったことで、62と95が「陰」と「陽」で調和しました。

全体がうまくいく状況になりました。

初九(First9)こそがこの卦(Hexagram)の主人公です。

彼は引き下がるのは納得がいかないかもしれませんが、それにより自分だけでなく全体がいい方向に行くのですから、吉なのです。


人生とは不思議なものです。

あなた、自分の理想を追求すれば、世界が良くなると思っているかもしれません。

でもあなたの役割は別のところにあるかもしれません。

全体が良くなることを考えていけば、道を間違いません。


◇2nd 陰 62

「彼は宇宙の法則に従順に従っているので、田畑を耕さないけれども収穫を得るし、耕作放棄した土地が作物を実らせる。彼は積極的に行動すれば恩恵を受ける。」

二爻 六二、耕やさずして穫(え)、菑(し)せずして畬(よ)する、則って往くところあるに利あり。 (六二、不耕穫、不菑畬、則利有攸往。)

(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)


62は、従順な「陰」です。

彼は、「陰」が入るべき下卦(Lower trigram)の中心いて、天の流れに順っています。

彼は、農地を耕しませんが、天の流れに忠実に生きているので、多くの収穫があります。

また、彼が開墾した農地は、そのまま放置しても地味を増し、より多くの実りをもたらします。

<䷘ 无妄(むぼう="Without Embroiling")>は、あなたが目的に固執することをやめて、退くことで福を受ける卦(Hexagram)です。

あなたが努力し、自己主張したとしても、状況が良くなるとは限りません。


この爻(Line)が出たら、不本意かもしれませんが、努力を捨てて天の流れに従ってください。

宇宙の法則に従えば、あなたはうまくいくのです。


◇3rd 陰 63

「あなたは天の意志に従わないので災いに遭うだろう。たとえば、あなたは歩きたがっている牛を、木に繋いでいる。通りすがりの旅人がこれを連れて行く。近くの村人をあなたは疑う。村人たちにとってあなたは迷惑である。」

三爻 六三、无妄之災あり。或(ある)いは之が牛を繋(つな)ぐ。行人之得(えもの)は、邑人之災(わざわい)。 (六三、无妄之災。或繋之牛。行人之得、邑人之災。)

(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


63は「陰」で、本来は「陽」が入るべき三番目の位置にいます。

彼は生き方が正しくありません。

天命は、彼に今の生き方から退きなさい、と告げているのですが、彼は今の生き方に執着しています。

大きな流れに従えば、彼は幸運を得ますが、従わなければ災いを受けます。


例として、易経は牛の話をします。

63は、一頭の牛を飼っていますが、牛が歩きたがっているのに、木につないでおきます。

たまたま通りすがりの旅人が、牛を連れて行ってしまいます。

牛は歩きたがっているから、喜んで旅人について行きます。

63は村人が犯人だと疑い、争いが起こります。

村人たちは迷惑します。

63は村人を疑わざるを得ないとしても、牛は歩きたがっているのに、木に繋いでおいた63に責任があります。


この爻(Line)が出た場合、トラブルが発生する可能性があります。

しかし、あなたが流れに従わず、天命を意味する牛の要求を受け入れないが原因です。

状況をよく見て、反省してください。


◇4th 陽 94

「あなたは、今のままおとなしく流れに従って、一歩退いた状態でいるのがいい。不本意だろうが、問題ない。」

四爻 九四、貞にすべし。咎(とが)なし。 (九四、可貞。无咎。)

(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)


94は「陽」で、上卦(Upper trigram)である「☰」乾("Force")の一部です。

彼は、健全で強さを持っています。

しかし、94がいる四番目の位置は、本来は「陰」が入るべき場所です。

また、94と対応する初九(First9)も「陽」なので、初九(First9)は彼と調和しませんから、彼には仲間もコネクションもありません。

なので、94は、積極的に行動したいのですが、立場上は一歩引き下がっておとなしくしなければなりません。

94は行動するのを諦めざるを得なくなります。

ところが、94がそうしたところ、幸運に恵まれるようになります。


この爻(Line)が出たら、あなたは現在、不本意ながら行動を控えざるを得ません。

ところが、今は<䷘ 无妄(むぼう="Without Embroiling")>の状況ですので、あなたは不本意なのに、運は開けます。

このままおとなしくしていれば、なにも問題はありません。


人生は、なにがいいのかわからないから不思議なものです。


◇5th 陽 95

「あなたは今、天命によって病気にかからざるを得ない。薬など飲まずに放置しておけば治癒し、喜びがあるだろう。」

五爻 九五、无妄之疾(やまい)あり。薬することなくして喜びあるなり。 (九五、无妄之疾。勿薬有喜。)

(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)


95は「陽」で、「陽」が入るべき五番目の位置にいます。

彼と対応関係にあるのは62です。

彼らは、「陰」と「陽」で調和しています。

95は万事めでたい状況にいます。

ところが、95は病気にならざるを得ません。

良くない状況に見えますが、これは<䷘ 无妄(むぼう="Without Embroiling")>の病気なので、彼は宇宙の流れに従ってこの病気にかかります。

薬など飲まなくて放置しておけば治癒する病気だし、また彼はこの病気にかかることで喜びがあると易経は言います。

逆に、95が薬など飲めば、かえって害があり、災難を引き起こす、となると易経はいいます。


筆者の知人は、大きな会社で出世し、営業部長をしていました。

彼はこのままいけば、最年少で役員になるはずでした。

ところが、病気にかかり入院することになり、彼は出世競争から脱落してしまいます。

彼にとっては不本意な出来事でしたが、彼は入院していた病院の看護婦と仲良くなり、この入院がきっかけで彼女と結婚しました。

彼はやがて小さな会社に出向することになりましたが、彼と妻との間には子供が生まれました。

以前ほど忙しくないので家族との時間を多くとれて、彼は幸せな人生を送るようになりました。

彼の出向先の会社は、彼が配属されてから業績が上がり、やがて彼は副社長に抜擢されました。

さらに彼は、元々いた大企業から呼び戻され、今ではその会社の社長です。

彼は言います。

「あのとき、病気で入院しなかったら、私の今の幸運はなかっただろう。」


人生とは不思議なものです。

運が悪く思えることが、あなたの幸福につながることはよくあります。

病気も、大きな流れで考えると、あなたの人生において必要であるかもしれません。

すべての出来事に意味があります。

病気、事故、天災など不運と思われることは多いですが、それらにも重要な意味があると考えれば、なにが幸運でなにが不運かは私達にはわかりません。

病気になるときは、天命ととらえて焦らず休みましょう。


◇6th 陽 上9(Upper9)

「あなたは、今は不本意でも大きな流れに従うべき時なのに、我慢できず流れに逆らおうとする。行けば災いがある。いいことはなにもない。」

上爻 上九、无妄なり。行けば眚(わざわい)あり。利するところなし。 (上九、无妄。行有眚。无攸利。)

(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)


上9(Upper9)は、<䷘ 无妄(むぼう="Without Embroiling")>の終極点を意味します。

今は、不本意であっても大きな流れに従うべき時なのに、あなたは我慢できず、流れに逆らおうとしています。

しかし、あなたは今は流れに従う以外の選択肢はとれません。

あなたが一歩退かず行動してしまえば、災いしか起こりません。

なにもいいことはありません。

<䷘ 无妄(むぼう="Without Embroiling")>の時期は、どんなに不本意であっても、宇宙の法則として、流れに従うしかない時期です。

それを動いてしまおうとするのは、終極点にいるからです。


易経は災いしか起こらないと断言します。

なのにあなたはあえて動く必要はありますか?

自己満足と全体の幸福とではあなたはどちらが大事ですか?

よく考えてください。


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