NO.47 困(こん="Confining"):困難、修行

困(こん="Confining")シンボル




困(こん="Confining")




⚋ 6th:陰:上6(Upper6)
⚊ 5th:陽:95
⚊ 4th:陽:94
⚋ 3rd:陰:63
⚊ 2nd:陽:92
⚋ 1st:陰:初6(First6)

※上6(Upper6)、95、94、63、92、初6(First6)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

困(こん="Confining"):困難、修行
困(こん="Confining"):困難、修行


構成の解説

上卦(Upper trigram)は、
「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange":水が流れ込みたまっている様子、沢・悦び・口

下卦(Lower trigram)は、
「☵ 坎(かん:Kan)」="Gorge":水・雨・雲・泉・危険・落とし穴


下は落とし穴、非常に困難な状況。

上は悦び。

基本的には、困る、困窮などを告げる卦(Hexagram)。

しかし、上に「悦ぶ」を意味する「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange"がある。

困難を受け入れ、立ち向かうことで喜ばしいことが生まれる。

易経では困難な状況を、単なる悪運とは捉えない。

困難の中に、悦びにつながる大きな自己変革の機会があると易経は捉える。

困難に直面した時の処世を説く卦(Hexagram)。


卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)

「あなたが思うことは、いい方向に行く。あなたは今、困難に直面しているが、困難に立ち向かうのは在り方として正しい。賢者は吉でめでたく、問題ない。あなたの言い訳は信じてもらえない。」

卦辞 困、亨る。貞し。大人は吉にして咎(とが)なし。言うことあれど信ぜられず。 (困、亨。貞。大人吉无咎。有言不信。)

この卦(Hexagram)には、善や正義などを意味する「陽」が三つ(92、94、95)あります。

しかし、92は両側を「陰(Yin)」に挟まれ、94と95も上下を「陰(Yin)」に挟まれています。

「陽」が象徴する正しさや健全さが、邪悪や無知、害意によって囲まれてしまっています。

「陽」はその力を発揮できません。

なので「困った」状況をこの卦(Hexagram)は意味します。

困難の中でも正しさや信念を失わずに努力していけば、未来には悦びがある、という形をこの卦(Hexagram)は示します。


困難とは、受け入れてもらえないことです。

たとえば失業状態で困窮するというのは、自分を受け入れてくれる勤め先がない状況です。

また仕事先で周囲と自分の考えが異なっていると、言いたいことが伝わりません。

自分の考えが伝わらないとき、人は「困る」わけです。

本質として、「あなたが受け入れられない」から困難は発生します。

しかし、もし自分の考えや信念が正しいならば、あなたは今は周りから受け入れてもらえないとしても、やがてはあなたの正しさは証明されていくでしょう。

なので、自分の正しさを持ち続ける人は、将来的には吉となります。

ならば、言い訳はやめましょう。

あなたが本当に正しいならば、今は困難に陥っていてもなんら問題はありません。


<䷮ 困(こん="Confining")>はまた、修行を意味します。

偉大なアイデアや発明は、最初は理解されず、受け入れられません。

そこで、人々から受け入れられるために何をするか?と私たちは考えます。

私たちが発想を発展させ、機能を改良するよう努力する中で、次第に私たちを受け入れてくれる人が増えていきます。

困難は、人に考えさせます。

困難があるから、人も物事も進歩します。


困難を、単なる災難ととらえるか、それとも修行ととらえて、進歩するチャンスを生かしていくかはあなた次第です。

この卦(Hexagram)が出たら、自分をまずは振り返って、自分の在り方や信念に過ちがないならば、苦しい中でも正しさを守り通して行きましょう。

まわりの人から信じてもらえない時期ですが、弁解はせずに信念を実現するための努力をしましょう。


◇ひと言アドバイス(象)

必死で困難に立ち向かいなさい

この卦(Hexagram)は、沢の下に穴があって、水が抜けてしまい、沢が枯れた状況を意味します。

このような困窮の時期における易経のアドバイスとしては、「必死で困難に立ち向かいなさい」とあります。


言い訳は受け入れられず、仕事を失い、周囲から相手にされない状況にいるとしても、自分の正しさをあなたが確信できるのであれば、必死で立ち向かうべきです。

口は閉ざし、倹約し、アイデアを改良し、状況が変わるのを待ちましょう。

困難な状況も天命です。

天から与えられた修行の時期と理解して困難を受け入れ、自分の信念を実現できるタイミングを前向きに待つべきです。


私たちは自分一人の力で生きているものではないので、周囲の影響によって、困難に陥ることもあります。

困難を前向きに受け入れることで、いい時期になったときに大いに飛躍することもできます。

そうした前向きさがなかったら、単に困窮するだけです。

どちらがよいですか?

現実的に前向きにやりましょう。


爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)

困(こん="Confining")
⚋ 6th:陰:上6(Upper6)
⚊ 5th:陽:95
⚊ 4th:陽:94
⚋ 3rd:陰:63
⚊ 2nd:陽:92
⚋ 1st:陰:初6(First6)

※上6(Upper6)、95、94、63、92、初6(First6)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

◇1st 陰 初6(First6)

「彼が切り株に腰掛けようとすると、切り株のとがった切り口でお尻が痛み、いたたまれない。ここは深い谷底である。三年間、彼は谷底から抜け出せない。」

初爻 初六、臀(いさらい)株木(しゅぼく)に苦しむ。幽谷(ゆうこく)に入る、三歳まで覿ず。 (初六、臀困于株木。入于幽谷、三歳不覿。)

(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


初6(First6)は「陰」で、能力がないろくでなしです。

彼は、困難を意味するこの卦(Hexagram)の一番下にいます。

ここは、深い谷の一番底です。

彼は困って落ち着かず、うろたえるばかり。

彼の有様は、切り株に腰掛けようとして、尖った切り口にお尻を刺されてうろたえているような状況。

見苦しいことです。

本来は彼と対応している94が助けてくれるはずですが、ここは谷底なので救援の手が届きません。

彼は三年はこの谷底から出れないでしょう。


ここでは「ひと言アドバイス」を思い出してみましょう。

人間は誰でも周りに受け入れられず、困難に陥る時期があります。

困難に直面したら、あなたはまず自分のほうが間違っていないか考えてみましょう。

初6(First6)は「陰」ですが、本来「陽」が入るべき一番目の位置にいます。

彼は反省すべき点があるはずです。

それを考えてみましょう。


またあなたの在り方に問題がないならば、うろたえず、困難を受け入れて時機を待ちましょう。

今は修業の時期なので、困難の中であなたのアイデアを改良していきましょう。

日本では修行を意味する格言として、「石の上にも三年」といいます。

これは、なにかを身に着けて使いこなせるようになるまでには三年かかる、という意味です。

三年は谷底を出れない、というのはちょうど修行に必要な年数です。

この機会を生かしましょう。

困難とは、受け入れれば修行となり、受け入れなければただの困難であることをお忘れなく。


◇2nd 陽 92

「彼は、ご馳走攻めで苦しむ。高い階級を意味する赤い前掛けが勝手にやってきて、彼は高い地位に祭り上げられる。この立場では、皆の象徴となるようなことをするにはいい。たとえば神官とか名誉職であれば。でも、戦争に出たりするのは凶である。道義的には戦争に出て失敗しても問題はないが。」

二爻 九二、酒食(しゅし)に苦しむ。朱紱(しゅふつ)方(まさ)に来たる。用って亨祀(きょうし)をするに利あり。征けば凶。咎なし。 (九二、困于酒食。朱紱方来。利用亨祀。征凶。无咎。)

(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)


92は、下卦(Lower trigram)の中心にいます。

彼は「陽」で、能力もあり中庸です。

92は、周りを初6(First6)と63という「陰(Yin)」たちに囲まれています。

初6(First6)と63は無能なので、彼らは92を持ち上げます。

92は自分で望まないのに、高い階級を意味する「赤い前掛け」を与えられ、毎日おいしいものを無理やり食べさせられる困難に直面します。

彼は望外の好待遇を受けて苦しむのです。


さて、彼の立場というのは、皆に祭り上げられているので、皆のアイドル的存在です。

神の祀りを司る神官のような立場や、名誉職、看板として働くならば、彼は適任です。

けれど、彼には実質的な権力はなく、実務的にはなにもできません。

彼が、戦争の司令官や、事業のプロジェクトリーダーをやろうとすれば、凶となります。

彼はみんなのアイドルなので、大事業を指揮して失敗しても大きな問題にはなりませんが、せっかくの偶像の立場が傷つきますから、やらないほうがいいでしょう。


◇3rd 陰 63

「彼は、前に進もうとすると石が邪魔して進めないし、後ろに戻ればいばらの上を歩くことになる。家に帰ると、妻がいない。凶である。」

三爻 六三、石に困しみ、蒺藜(しつり)に據(よ)る。其の宮に入りて、其の妻を見ず。凶。 (六三、困于石、據于蒺藜。入于其宮、不見其妻。凶。)

(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


63は「陰(Yin)」で、ろくでもない小悪人です。

にもかかわらず彼は、本来は有能な「陽」が入るべき三番目の位置にいます。

能力のない63が実行責任者のポストにいるから、ミスマッチで大変困ることになります。

彼が前に進もうとすれば大きな石が道をふさいでいて前に進めないし、後に戻ればいばらの道で歩けないようなもの。

彼の上には上司である94、95がいて、彼を毎日叱ります。

下には有能な彼の部下である92がいて、彼を批判します。

彼は不愉快ですが、仕事を92にやってもらっているので、92に腹を立てることはできません。

さて、63は疲れ果てて家に帰りますが、妻は上6(Upper6)です。

彼らは夫婦そろって「陰」なので、関係はよくありません。

彼は家に帰っても、妻がいないような状況です。

彼が凶であることは当然です。


この爻(Line)が出た場合、あなたは自分の在り方、態度や行動を見直すしかありません。

不相応な役職は辞退していいでしょう。


◇4th 陽 94

「彼は、妻子を助けに行こうとするがなかなか前に進めない。金属の重い車が道をふさいでいて押しても引けどもまったく動かない。彼は恥をかかざるを得ないけれども、最終的には救助は成し遂げることができる。」

四爻 九四、来たること徐徐(じょじょ)たり。金車に困(くる)しむ。吝(りん)なれど終わりあり。 (九四、来徐徐。困于金車。吝有終。)

(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)


94は「陽」で、能力があります。

しかし彼は、おとなしい「陰」が入るべき四番目の位置にいて、能力を十分に発揮できません。

94と対応している初6(First6)は、彼の妻子です。

彼の妻子は困窮のどん底に落込んでいます。

94は救助に向かわねばなりませんが、二番目の位置に92がいて邪魔します。

92は重い金属の車両のイメージで、94が助けに行くのを妨害しています。

押しても引いても92を動かせませんので94は難儀し、苦しみます。

彼がすぐに救助に向かえないことは、恥ずかしいことです。

けれども、彼の妻子は、夫を信じてくれています。

時間はかかりますが、最終的に94は妻子を困窮から救い出すことができます。


この爻(Line)が出たら、あなたは誰かを助けねばならぬが、障壁があり時間はかかります。

しかし相手は待っていてくれますから、粘り強くやりましょう。



◇5th 陽 95

「あなたは、最初は鼻をそがれて足を切られるような迫害を受けて苦しみ、後には赤い前垂れを押し付けられ、高い爵位に祭り上げられて苦しむ。時間はかかるが、あなたの状況は次第に喜ばしいものになる。祭祀を主宰していい。」

五爻 九五、劓(はなき)られ、刖(あした)たる、赤絨(せきふつ)に困(くる)しむ。乃(すなわ)ち徐(ようや)くにして説(よろこ)びあり。用って祭祀するに利あり。 (九五、劓刖、困于赤絨。乃徐有説。利用祭祀。)

(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)


95は「陽」で、君主が入るべき五番目の位置にいます。

彼は聡明な君主です。

しかし彼は悪人たちに囲まれており、目立つので迫害されます。

鼻を切り落とされ、足を切り落とされるような酷い迫害を彼は受けます。

しかし能力がない悪人たちは、彼ら自身は何もできないので、能力がある人物を必要としています。

彼らはやがて高い爵位を表す赤い前垂れを95に贈り、高位の地位に祭り上げます。

95はいずれにせよ苦しむことになります。

しかし95は能力があり、中庸で、リーダーにふさわしい人物です。

時間はかかりますが、彼は名実ともにリーダーとして皆を指揮していくようになります。

彼が真のリーダーとなった時には、祭祀を主宰し、政治を実行していいでしょう。


悪人たちの中では、本当の人格者や実力者は目立って迫害されますが、この卦(Hexagram)の原則に従って弁解はせずに、実力で周りから理解されるようになりましょう。


◇6th 陰 上6(Upper6)

「あなたは道を覆う棘のある植物や、岩だらけの足元に苦しむ。ここで動けば傷を負うので後悔することになる。しかしあなたが反省するならば進んでいい。吉となる。」

上爻 上六、困于葛藟(かつり)に臲卼(げっこん)に困(くる)しむ。曰(ここ)に動けば悔ゆ。悔ゆることあれば征きて吉なり。 (上六、困于葛藟于臲卼。曰動悔。有悔征吉。)

(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)


上6(Upper6)は、<䷮ 困(こん="Confining")>の終極点を意味します。

上6(Upper6)は「陰(Yin)」で、能力はなく、もっとも困難が多いところに来てしまいました。

棘のある植物に道は塞がれ、足元は尖った岩に覆われていて彼は進めません。

彼は進めは傷つくこととなります。

しかし、ここは困難が終わる転換点です。

最大の困難に直面した時は、私たちは自分を反省せざるを得ません。

なので、私たちの生き方が大きく変わることがあり得ます。

私たちの生き方が変わった場合、困難の時期は終わり、全く新しい状況が訪れます。

私たちは、そうなれば前に進んでいけます。


人間は、困難がない時には、自分のことや世界の在り方を考えません。

困難があって、うまくいかないから、智慧が養われます。

困難が人間を成長させ、進化させます。


あり得ぬような困難は、あなた自身に革命的な転換をもたらします。

今こそ、自分に革命を起こしましょう。


卦辞
困、亨る。貞し。大人は吉にして咎(とが)なし。言うことあれど信ぜられず。
(困、亨。貞。大人吉无咎。有言不信。)
初爻
初六、臀(いさらい)株木(しゅぼく)に苦しむ。幽谷(ゆうこく)に入る、三歳まで覿ず。
(初六、臀困于株木。入于幽谷、三歳不覿。)
二爻
九二、酒食(しゅし)に苦しむ。朱紱(しゅふつ)方(まさ)に来たる。用って亨祀(きょうし)をするに利あり。征けば凶。咎なし。
(九二、困于酒食。朱紱方来。利用亨祀。征凶。无咎。)
三爻
六三、石に困しみ、蒺藜(しつり)に據(よ)る。其の宮に入りて、其の妻を見ず。凶。
(六三、困于石、據于蒺藜。入于其宮、不見其妻。凶。)
四爻
九四、来たること徐徐(じょじょ)たり。金車に困(くる)しむ。吝(りん)なれど終わりあり。
(九四、来徐徐。困于金車。吝有終。)
五爻
九五、劓(はなき)られ、刖(あした)たる、赤絨(せきふつ)に困(くる)しむ。乃(すなわ)ち徐(ようや)くにして説(よろこ)びあり。用って祭祀するに利あり。
(九五、劓刖、困于赤絨。乃徐有説。利用祭祀。)
上爻
上六、困于葛藟(かつり)に臲卼(げっこん)に困(くる)しむ。曰(ここ)に動けば悔ゆ。悔ゆることあれば征きて吉なり。
(上六、困于葛藟于臲卼。曰動悔。有悔征吉。)

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