NO.27 頤(い="Swallowing"):生業、養う

 頤(い="Swallowing")シンボル

頤(い="Swallowing")


 6th:陽:上9(Upper9)
⚋ 5th:陰:65
⚋ 4th:陰:64
⚋ 3rd:陰:63
⚋ 2nd:陰:62
⚊ 1st:陽:初9(First9)

※上6(Upper6)、95、94、63、92、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

頤(い="Swallowing"):生業、養う
頤(い="Swallowing"):生業、養う。象徴は口。

構成の解説

上卦(Upper trigram)
「☶ 艮(ごん:Gen)」="Bound":山・障壁・行き止まり

下卦(Lower trigram)
「☳ 震(しん:Zhen)」="Shake":雷・地震・物事の胎動・妊娠


下卦(Lower trigram)は「動く」を意味し、上卦(Upper trigram)は「止まる」を意味する。

この卦(Hexagram)は全体的な形が「口」である。

あごが動いてモグモグと食べ物を食べる。

生きていくためには、「食って」行かなければならない。

生業、すなわち食っていくための手段をこの卦(Hexagram)は意味している。

生業の状況や目的をいろいろの角度から考察する卦(Hexagram)。

古代世界に書かれているとしても、現代においてもすべて当てはまる。


卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)

「あなたは正しく仕事をしているならば吉である。生業、つまり自分がどうやって生計を立てているのかを、よくよく観察して自分の現状を考えてみたらよい。」

卦辞 頤、貞しければ吉。頤を観るに自ら口実を求む。 (頤、貞吉。観頤自求口実。)

この卦(Hexagram)は、口を大きく開けた形です。

口は下の顎が動いて、上顎に当たって止まります。

人間が生きていくことは、食べなければなりません。

生きていくために、皆がなんらかの仕事を持つのです。

古代では、仕事とは食べるための獲物を狩ることだったり、魚を取ることだったり、田畑を耕して食料を生産することでした。

時代が変遷し、生業は工業やサービス業になりました。

生業の内容も食物を得るのではなく、貨幣に収益を獲得するスタイルとなりました。

しかし「食べて」いくために生業に従事するという意味では、生業の本質は変わりません。


さて、天と地は万物を養い、聖人は賢明さを養い、万民に還元する、と易経は説きます。

仕事は、最終的に公共性が必要です。

あなただけ利益を得ることができても、人の役に立たない仕事は続きません。

なので易経は自分が今どんな生業で生きていて、また仕事の目的はなにかを考えなさいと言うのです。

そうして考えてみて、あなたの仕事が自分にとっても公共性においても正しいのであれば吉です。

正しいと思えないのであれば、生業とその目的について、考え直すべきです。


この卦(Hexagram)が出たら、あなたは自分のしている仕事を考え直してみましょう。

あなた自身が稼げていて、社会の役にも立っているならば吉です。


◇ひと言アドバイス(象)

言葉を慎んで徳を養い、飲食を節制して健康を養おう

上に動かない山があり、下では雷が鳴り響いています。

下にある「☳ 震(しん:Zhen)」="Shake"は生命のはじまりを意味しますから、山の下で雷が鳴れば、山の草木は芽吹き、新しい命が発生します。

<䷚ 頤(い="Swallowing")>は、命を維持するだけでなく、命を育てていくという意味もあります。

この時期においては、易経は、言葉を慎むことで徳を養いなさい、飲食を節制することで健康を養いなさい、とアドバイスします。

口は食べる場所であり、言葉を発する場所でもあります。

この卦(Hexagram)では、口に関係することを再考してみなさい、というのがテーマです。

言葉を正しく使い、人に気遣いをもっているかを考えましょう。

暴飲暴食をしていないかを見直しましょう。


爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)

頤(い="Swallowing")
 6th:陽:上9(Upper9)
⚋ 5th:陰:65
⚋ 4th:陰:64
⚋ 3rd:陰:63
⚋ 2nd:陰:62
⚊ 1st:陽:初9(First9)

※上6(Upper6)、95、94、63、92、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。

◇1st 陽 初9(First9)

「あなたは、智慧があり、いい素質を持っているのに、それらを捨てて私のところへ来る。あなたは物欲しそうな顔をして占いをし、楽な仕事を見つける方法を尋ねる。こんな態度ではあなたはダメだ。」

初爻 初九、爾(なんじ)の霊亀(れいき)を舎(す)てて、我を観て頤を朶(た)る。凶。 (初九、舎爾霊亀、観我朶頤。凶。)

(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


初9(First9)は「陽」です。

一番目の位置は出発点です。

この位置には積極的な「陽」が入るべきです。

彼は積極的で、これから出発するにはふさわしい人物です。

彼は今は社会的にも最下層にいて苦労をしながら、その中で多くのことを学んでいかねばなりません。

しかし、対応関係にある64は、ろくでもない人物で、彼は初9(First9)にいろいろと言います。

「こんな仕事をしていても、あなたは出世できない。」

「こんな仕事をしても苦労するだけで意味などない。」

不安になった初9(First9)が、易経に、いったいどんな仕事をしたらよいのか、と尋ねます。

易経は、辛らつに回答します。

「あなたはまだ若く、苦労するのは当たり前。

苦労しながらあなたは叡智を身につけねばならない。

苦労から逃避して、楽な仕事を探そうというのであれば、あなたは凶だ。」

と易経はしかりつけます。


この爻(Line)が出たらあなたは反省すべきです。


◇2nd 陰 62

「彼女は、立場が下の者に不正に養われている。彼女が本来は下の者を養うべきである。そこで彼女は上にいる人物に養ってもらおうとするが、この人物は養わない。彼女が行動しようとすれば凶である。」

二爻 六二、顛(さかしま)に頤(やしな)わる、経(つね)に払(もと)れり丘において頤(やしな)われんとす。征けば凶。 (六二、顛頤、払経于丘頤。征凶。)

(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)


62は「陰」で、ここでは女性です。

初9(First9)が身近なところにいるので、62は彼に養ってもらいますが、彼は62よりも若く、立場も下です。

初9(First9)は本来は62のほうが養ってやらねばならぬような相手ですから、この関係は逆で恥ずべきことです。

62は65と対応関係にあるので、65に養ってもらおうと62は65のもとへ行きますが、65は「陰(Yin)」です。

彼には力がなく、彼女を養えません。

彼女が無理に65に頼もうとすれば、凶となります。

八方ふさがりの状況です。

62は二番目の位置にいますから、彼女は基本的には今はおとなしくしているべきです。


この爻(Line)が出たら、あなたは恥ずかしくても状況に従順に従い、今後をどうするか考え直しましょう。


◇3rd 陰 63

「彼は、食っていくためにならどんな不正なことでもやろうとしている。生計を得ているという点では正しいが、凶である。あと十年は考えるようなことを実行してはならない。いいことにはならないであろうから。」

三爻 六三、頤(やしな)うに払(もと)る。貞なれども凶。十年用うるなかれ。利するところなし。 (六三、払頤。貞凶。十年勿用。无攸利。)

(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)


63は「陰」ですが、彼は「陽」が入るべき三番目の位置にいます。

彼は不正な在り方をしていて、中庸さもない愚か者です。

彼は食っていくためにはどんなに不正なことでも手段を選ばずやろうとしています。

生業を探すことは義務として正しいけれども、正義を無視して金を稼げば、彼は身を滅ぼします。

彼は十年はおとなしくしていたほうが良いでしょう。

つまり彼は頭を冷やして考え直すべきです。


あなたには食っていくために犯罪を犯してもいい理由などありません。

道徳に反したことはしてはいけません。


◇4th 陰 64

「彼は、家来に養われている。だがこの状況は正しい関係に基づいていて、彼らの立場は逆転状態だが、吉である。彼は家来を厳しく監視し、さらに細かい要求を出す。問題はない。」

四爻 六四、顛(さかし)まに頤(やしな)わるる。吉。虎視眈眈たり、其の欲逐逐(ちくちく)たり、咎なし。 (六四、顛頤。吉。虎視眈眈、其欲逐逐、无咎。)

(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)


64は、上卦(Upper trigram)にいるので、為政者側の人間です。

彼は「陰(Yin)」で、経済力はなく、従順に状況に順う人物です。

彼の下に経済力がある初9(First9)がいます。

64は身分が低いこの初9(First9)に養われながら政治を行っています。

主従の方向と、養う、養われるの方向が逆転しています。

でもこの状況は正しい主従関係にも基づいているので、それにより天下の政治がちゃんと行われるならば好ましいことです。

ただし、彼は経済力がないからといって初9(First9)に侮られてはなりません。

64は虎視眈々と、威厳をもって初9(First9)を監視するべきです。

また、実務をしっかりやって、どんどん初9(First9)に対して命令していくことです。

国が繁栄するため、国民の生活をよくするためならば、64はそうして問題はありません。


◇5th 陰 65

「王が常識に反する政策を行おうとしている。政策の目的が正しく、最後までやり通せるならば吉である。ただし大きな冒険はできない。」

五爻 六五、経(つね)に払(もと)れり。貞に居れば吉。大川を渉るべからず。 (六五、払経。居貞吉。不可渉大川。)

(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)


65は「陰」で、五番目の位置にいるので、実力も経済力もない君主です。

65は自分の力では国を養うことができないので、上9(Upper9)に国民を養ってもらうという政策を行います。

上9(Upper9)は65よりも身分は高い実力者ですが、部外者です。

部外者に国民を養ってもらうというのは、国の経営としては非常識です。

しかし、国民を養うために65が柔軟に考えた政策です。

65がこの政策を行うならば、彼は上9(Upper9)に完全に任せ、最後まで政策をやりとげるべきです。

65が最後までこの政策を維持できれば、国民を養うという大きな目的は達成されますから吉となります。


ただし、65は実力がない君主ですから、この時期においては他に冒険的なことはできません。

彼はくれぐれも自分の足元をよく見て事を進めるべきです。


◇6th 陽 上9(Upper9)

「みんなが、部外者の彼に養われる状況となった。一人の部外者が政治を行うことは危険ではあるが、みんなの生計が成り立つならばめでたい。彼は冒険をしてもいい。恩恵がある。」

上爻 上九、由(よ)って頤(やしな)わる。厲(あや)うけども吉。大川を渉るに利あり。 (上九、由頤。厲吉。利渉大川。)

(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)


一番上の位置は権威はありますが属性がありません。

上9(Upper9)は「陽」で、実力者を意味します。

が、彼は部外者です。

君主である65は経済力がなく、能力もないので国民を食わせることができなくなりました。

65は、外部の実力者である上9(Upper9)に政治を委任しました。

一人の部外者によって国民は養われることとなりました。

上9(Upper9)は部外者なので、彼が政治を行うことは危険ですが、彼は君主の信頼が厚く実力もあります。

国民の生活が安定するのであれば、上9(Upper9)が政治を行うのは吉です。

65は君主ではあっても力がないので大きな冒険はできませんでした。

が、上9(Upper9)は、大胆な政策を推進できます。


国や組織は、国民や従業員が食えることが重要です。

部外者が代表者となったとしても、皆の生活が安定するのは喜ばしいことです。


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