易経占い入門講座 その4 占った内容をどのように読むか?実例編!「変爻(Change)」が出ている場合

ここまで、

「易経占い入門講座 その1 占い方カンタン解説!準備編」

「易経占い入門講座 その2 占い方カンタン解説!実践編!」

「易経占い入門講座 その3 読解カンタン解説!原則編!」

と三回にわたり、実際に易経で占う方法、および易経における原則となる「めでたい基準」といったことを見てきました。


今回は、実際の易経占いをシュミレーションしてみます。

「易経占い入門講座 その2 占い方カンタン解説!実践編!」で例として出てきた、「明夷(めいい="Darkening of the Light")」を例とします。

どのようにこれを解釈するのか?を、解説してみたいと思います。

易経の使い方を、実例的にご紹介しましょう。今回は、「変爻」が出ている場合についてです。
易経の使い方を、実例的にご紹介しましょう。今回は、「変爻(Change)」が出ている場合についてです。

易経に示されているのは「象徴」

「タロットカード」をやったことがある方は、タロットカードは「絵」によって占い手が問うことに対する見通しや暗示を与えるものです。

基本的に、見るものにいろいろな想像や暗示を与えるもののことを「象徴」と呼びます。

易経の「卦辞」「爻辞」は、タロットカードの絵と同じく、「象徴」として書かれます。
易経の「卦辞(Explanation of the Hexagram)」「爻辞(Explanation of the Lines)」は、タロットカードの絵と同じく、「象徴」として書かれます。

易経に示される、「卦辞(Explanation of the Hexagram)」「爻辞(Explanation of the Lines)」といったものは、どれも意味深長なことが描かれています。

タロットカードとは違い、易経の象徴には絵はありません。

ですが、これもまた「象徴」以外のなにものでもありません。

ここに描かれていることは、占ったものの状況や主観によって様々な意味をもたらすもので、固定の解釈を決めつけることはできません。


「変爻(Change)」が出た場合

変爻(Change)は、「爻辞(Explanation of the Lines)」に対するマーキングです。

爻辞(Explanation of the Lines)は、1st、2nd、3rd、4th、5th、6thの六つについてそれぞれに意味が書かれています。

易経占いにおいては、変爻(Change)が出ている位置の爻辞(Explanation of the Lines)が、易経からの占い結果となります。

今回は、あなたが易経占いをした時、変爻(Change)が「ある」場合、易経をどう読んでいくのかについて実例を用いて解説してみようと思います。


実例

占い手が、次のような状況に悩み、今回、易経で占いを行ったと仮定します。

例として、仕事上の悩みがある方が「明夷(めいい)」の占い結果が出た場合を考えます。
例として、仕事上の悩みがある方が、占って「明夷(めいい="Darkening of the Light")」が出た場合を考えます。

「会社での人間関係で悩んでいます。

現在、管理課にいるのですが、昨年から上司と合いません。

この上司から目をつけられてしまっていて、”お前はクズだ!””こんなこともできないのか!”と毎日のようにいろいろ言われてしまいます。

自分は四月から不慣れな部門の管理担当をさせられています。

私の上司は、彼が考えるやり方で私が仕事をやらなければ納得しない性格です。

私だけでなく他の人も非常に仕事がやりづらくなっています。

ちょうど今、営業部門のほうで人が足らないので、私に異動の打診があります。

私は管理畑でずっと仕事してきました。

慣れない営業部門に移って仕事ができるのか、不安はあります。

ですが、今の上司の下で管理部門の仕事をしていても、精神が追いつめられてしまって、最近、夜もよく寝られません。

いっそのこと、人事部にこの上司を告発しようかと最近考えます。

そうすることで今の上司が替わってくれたら、と思いますが、それは私の一存ではどうにもなりません。

私はどうしたらよいでしょう。

営業部門に異動したほうがいいのでしょうか?」

さて、この方が易経占いを行い、「明夷("Darkening of the Light")3rd」が出た場合を考えます。

どのようにこの結果を考えたらよいでしょうか?


「卦辞(Explanation of the Hexagram)」は、あなたが今置かれている状況を示す

この方が占った結果は、「明夷("Darkening of the Light")3rd」というものでした。

易経に慣れた方の場合は、最初から「明夷("Darkening of the Light")3rd」の項目を読んでみればいいのです。

が、一般の方が入門で易経占いを行う場合は、これだけでは意味が判然としないことがよくあります。

まずは出た象徴「卦(Hexagram)」の全体説明である「卦辞(Explanation of the Hexagram)」から読んでみるのがよいでしょう。

「卦辞(Explanation of the Hexagram)」は、易経に尋ねている人が今現在、置かれている全体状況を示しています。

もし、「変爻(Change)」が出ていない場合は、占い手はこの「卦辞(Explanation of the Hexagram)」だけを参照すればいいのです。

私が作成した説明ページには、現代語の大意訳とその概要の解説が入っています。

「明夷("Darkening of the Light")」の説明ページは、リンクを貼っておきます。

「明夷("Darkening of the Light")」の「卦辞(Explanation of the Hexagram)」は、引用すると次のように書かれています。


「暴君に虐げられる時期は、困難に耐えつつ正しさを守り通しなさい。」


「暴君に虐げられる時期」というのは、占い手の現在の状況です。

解説には、次のようなことも書かれています。

65がこの卦(Hexagram)の君主です。
彼は中庸でバランス感覚にすぐれた君主ですが、その上に上6(Upper6)という暴君がいて、彼を迫害します。
65は大変な困難に直面しています。

また、

上卦(Upper trigram)において65は上6(Upper6)と身内、同じ上卦(Upper trigram)の一部であるため、逃れることができません。

しかし65は、聡明さを隠しつつ、従順なふりをして最後まで自分の仕事を成し遂げるべきです。

彼は時には狂ったふりをして、この困難な時期を生き延びます。

迫害されても、彼が生き延びて正しさを守り通すならば、チャンスをまた作ることもできます。

現実問題と照らし合わせて考える場合、次のようなことが想起されます。


・現在の上司=暴君

・占い手自身は、能力がないわけでは決してない。

・今は、冷静に、状況に逆らうことなく、時には自分の意見があっても隠しつつ状況を切り抜けるべき時期

・自分の考えの正しさは捨てるべきではない


他にも思い当たることがいろいろとあるかもしれません。

こうしたことが、まずは現在の全体としての状況として暗示されるということです。

ひと言アドバイス

卦辞(Explanation of the Hexagram)のなかには、「ひと言アドバイス」という忠告がついています。

これは、この卦(Hexagram)が出た場合に、占い手がとるべき態度について書いています。

変爻(Change)が出ている場合でも、これは今の状況を乗り切るための正しい態度を示します。

なので、参考にする必要があります。

ここでは、次のようなことが書かれています。

聡明さを暗くして、愚かなふりをするのが、聡明さを隠すことです。

そうしたほうが相手に警戒も攻撃もされず、相手からより多くの本音を聞き、情報を得ることができます。

彼は、今の時期は基本的に上司と敵対するのではなく、上司に対して自分の考えは言わずにおとなしくした方がいいようです。

占い手は、上司のやり方に反発しています。

上司を人事部に告発しようかとも考えるようです。

が、今の時期は現在の部署に限らず、占い手が正しくても認められません。

彼は苦難を受けねばならない時期だということです。


「私の上司のやり方はおかしいです!」


と彼が言ったところで、人事部には聞き入れてもらえません。

こうした場合は、「彼の上司がおかしい」ことへの疑問は捨てる必要もありません。

が、今は彼は黙っているに越したことはありませんよ、と解釈できます。

これは、次に見ていく「爻辞(Explanation of the Lines)」においても、状況を乗り越えるために必要とされる態度です。


「爻辞(Explanation of the Lines)」は、より具体的な状況についての易経の判断を示す

「暴君によって虐げられて、なかなか正論も通らない」のが現在の全体状況です。

次に、「変爻(Change)」によってマーキングされている「爻辞(Explanation of the Lines)」について見ていきます。

「爻辞(Explanation of the Lines)」は、全体状況を踏まえたうえで、実際の判断基準を与えるものです。

今回の「爻辞(Explanation of the Lines)」は、引用しますと、

「彼は、暴君に虐げられているが、狩りをするふりをして南に兵を挙げ、暴君の首を切り落とすだろう。ただし彼は焦って行動しないように心がけるべきである。」

解説では、次のように書かれます。

93は、叡智を意味する「☲ 離(り:Li)」="Radiance"の最上位にいます。
彼は最も聡明であるうえに、「陽」で積極的です。
しかも、積極的に行動できる三番目の位置にいます。
しかし「☷ 坤(こん:Kun)」="Field"のすぐ下に彼はいます。
暴君の大きな抑圧が彼にかかります。
また93が対応関係にあるのが上6(Upper6)の暗君であるため、追い詰められています。
彼は世界に明るさを取り戻すべく、狩りにでるふりをして兵を挙げ、暴君を討伐します。
「南に行く」というのは、可能性のある方向を目指す、という意味で易経で使われる常套句。
これは革命です。
事が重大であるので、93は焦って行動すべきではありません。
周到な準備をしてからやるべきです。

現在の状況に「爻辞(Explanation of the Lines)」を照らし合わせて考えてみましょう。


・彼は能力も高いので、別の部署に異動しても仕事はできる

・現在の状況は、暴君的な上司により彼は追いつめられている

・「狩りに出る」とは、ここでは営業部門へ異動すること?

・営業部門へ彼が異動することで、彼が今の上司を見返す機会が得られる?

・「南にゆきて」は、可能性のある方角。ここでは営業部門から彼は求められている。彼を必要としている部署へ移動するべきである?


易経の判断は、現在、彼が誘われている営業部門に異動することで、彼は能力も発揮できるし、今、自分を苦しめている上司を見返すこともできる、とあります。

彼は上司を告発することもできるかもしれません。

しかし、解説には重要な忠告も書かれています。

事が重大であるので、93は焦って行動すべきではありません。
周到な準備をしてからやるべきです。

つまり、

・彼が上司を見返すには、周到な準備が必要

・今、彼が告発を考えても、逆に上司から攻撃される

・なので、彼は最初に営業でしっかり実績を作り、自分への信用ができてから、上司を告発することを考えるべきである。

というようなことが想起されるでしょう。


占いの判断例

私が、占い手に意見を述べるとすれば、次のようになるでしょう。


「今、あなたに来ている営業部門への異動の話は、異動に応じてもあなたの能力ならば十分に成果を上げれるでしょう。

あなたは管理課で苦悩するよりも、営業部門からの誘いを受け入れて、営業部門で仕事したほうがよろしいでしょう。

あなたの上司については、恨みを持って彼を告発しようとか、そういう考えは今はやめなさい。

あなたは営業部門で実績を作ることが優先事項です。

みんなにあなたの仕事に対する考え方が認められてからでなければ、あなたの上司を告発することはできません。

そういうことは自然な状況にしたがってやることです。

今は、上司と敵対しても、あなたの方がさらに窮地に陥るでしょう。

上司からはむしろ無能と思われるくらいでいいのです。

今はあなたの能力は隠してください。

あなたの能力が会社から認められれば、上司を告発しなくても、あなたにとってはいい状況が訪れます。

冷静になって困難に対応してください。」

といった感じになるでしょうか。


最終的には、本人の自由意思が未来を変える

ここで、みなさんにお断りしておきますが、以上に見てきたことはあくまで易経によって示される現在の状況と、今後の可能性に過ぎません。

「予言」ではないのが易経占いです。

ここで示されることは、あくまでも現在の占い手の状況から起こってくる可能性に過ぎません。

逆に言えば、たとえ易経占いで悪い見通しが出たとしても、生き方を「自由意思」で変えるならば、事態はまったく別な方向に展開することもあるということです。

ですから、ここで例であげた占い手は、今すぐ上司を人事部に告発することもできますし、営業部門に行く話を断ることもできます。

結果はどうなれ、そうしたとしても構わないというところが、人間に与えられた「自由意思」です。

また、彼は上司に対して自分の態度を改めて、営業部門への異動はしない、という方向を選択することもできるでしょう。

それも「してよい」のです。

なぜならば人間は自由意思を与えられているからです。


自由意思。

これは人間に与えられている最も重要なものです。

易経には、見通しや道を示す機能はあっても、自由意思に対してなにか強制したりする機能はありません。

だから、易経で占ったうえで、どういう行動を最終的にとるかは、占い手の自由意思次第となってきます。

私は自由意思を最大限、尊重します。

易経占いの中で出てくる人間としての「道」について、人間という生物の世界をよくよく俯瞰したうえで易経の作者は描き出しています。

最終的には自由意思で占い手は決定します。

でも、易経の示す忠告は大いに参考にしたらよろしいと思っています。


ところで、「変爻(Change)」が出ない場合についてはどうするのか・・・?

については、次回、

易経占い入門講座 その5 占った内容をどのように読むか?実例編!「変爻(Change)」が出ない場合

にて詳しく述べます。


太極道人


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